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6.番《つがい》の夜(中)

 何の物音もしなかった。なのにいきなりカーテンごと抱きしめられた。 「足が丸見えだ。何をやっている」 「ノリが悪いな」 「あいにくそんな暇じゃない」  抱擁がとかれてカーテンをはぎ取られ、改めて抱きしめられた。 「遥」  熱く名を呼ばれる。遥は自分からキスを求め、隆人の背に腕を回して縋った。その時微かなミントの香りを感じ、思わずふふっと笑いがこぼれた。 「何かおかしいか?」  隆人がいぶかしげにしたので、遥は腕を緩めて目をのぞく。 「ミントの香りがしたから、歯磨きしてきたんだなって」 「寝る前には歯磨きはするだろう」 「するけど――」  遥は隆人の首に再びしっかりと抱きついた。 「何だかうれしかったんだ」 「おかしな奴だな」  隆人の腕が遥の背をしっかりと抱いた。互いの舌を絡め、奥まで隅まで互いを味わう。  唇がはずれて、隆人のそれが耳朶へ移った。唇で食まれ、舌先が耳殻の形をなぞる。その濡れた音にぞくぞくする。  ふたりもつれる足取りでベッドに倒れ込んだ。  隆人がなおも遥の左耳をなぶり回しながら、爪で右胸のわずかな尖りを執拗に弾き出した。 「あ、ああ……」  二箇所同時に責められるとどちらを感じればいいのか、どちらを感じているのかわからなくなる。それがもどかしくて、遥は隆人の股間に自らの熱く猛ったものをこすりつけた。 「今夜はせっかちだな」  唾液に濡れた耳に吹き込まれる息が冷たい。 「ずっと待たされたんだ。早くしてくれてもいいだろう?」 「何を?」  久々に隆人の性格の悪さが顔を出した。 「わかってるくせに。自分だってこんなに硬くでかくなってるくせに」  証明するように隆人の胴に腕を回して、互いのものをパジャマ越しにこすりつける。 「ああ、もう下着もパジャマも台無しだ」  隆人が強引に体を離した。もどかしげに自分の着ているものを脱ぎ捨てると、遥のものも脱がしにかかった。遥も自らパジャマと下着を蹴り脱ぐ。 「危ないぞ」 「隆人」  咎める口調を無視して、遥は隆人に両手を伸ばして誘った。  隆人が遥の両の腿の間に入り込んで来た。そして遥の後ろを確かめ指をいれた。  遥の体がのけぞる。 「ローションは大丈夫そうだな」 「今日、新しいの、用意されてて、丸くて中に入れると溶けてくるって。それが漏れてきそうで……だから……」  隆人のそれが押し当てられる。 「自分で入れたのか?」  でもくすぐるように細かく上下に揺れるだけで、遥の望み通りにならない。 「ああ、そうだよ。自分で入れた。奥まで入れろって説明書に書いてあったから、自分の指で奥まで。だから、だから、早く」 「いい子だ」  隆人が指で広げながらゆっくりと、しかし確かに肉を押し広げながら入ってくる。その重く熱いかたまりの存在に意識が集中し、体も乗っ取られてしまう。  まるで遥の内部を検分するように隆人が静かにゆっくりと動き出す。こすられる異様さにぞくぞくとして肌が粟立つ。 「ここが好きだったな」  先端で遥の最も感じやすい部分がそっと探し当てられ、弱く押しもまれる。 「あああ……」 「いいか、遥」  がくがくと頷く。 「言葉で言え」 「いい、かん、じてる、隆人を……」 「俺もだ」  隆人のうねりが大きくなった。感じるところもひりひりとするところもすべてない交ぜにされて、挿れられて抜かれて、腰から体がとろけていく。  繋がりあったまま隆人が、遥を抱えて体を起こし、ベッドに座る。 「う……あふ……」  更に深く楔が自重で打ち込まれ、体全体を隆人で満たされたような気がする。 「おれの、さわって」  頼むと今度は素直に応えてくれた。  遥の濡れたものが大きくたくましい手に包み込まれ、小刻みに動かされ始める。  もう遥は力がまるで入らず、隆人を受け入れたまま体を預けて、与えられる快楽に酔った。  濡れる先端もくびれも、硬く立ち上がったそれ自体も隆人の指の動きに翻弄されて、すぐにも上り詰めてしまいそうになる。  呼吸がせわしなくなるので限界を察したのだろう。隆人の指が残酷に根元を押さえた。 「ああっ」 「まだ早い。俺と一緒に行け」 「はやく、はやくし、て」 「お願いは?」 「おねがいだから、隆人、はやく、いきたい、ふたりで」  隆人が遥をシーツに伏せさせた。遥はシーツに顔を伏して隆人を期待に震えながら待つ。  隆人が激しく遥の体を襲った。浅くまで抜かれては敏感なところを押し込まれ、開かれた双丘を肉がうちつけてくる。  その振動が背筋を駆け上って頭まで痺れさせられる。更にそれに緩急が加えられ、遥は波にもみくちゃにされるような恐怖とそれを超える快楽に声を上げる。  肉を打つ音と二人の呼吸の音だけが室内に響き、やがてリズムは性急になり、遥は悲鳴を上げた。  そして二人崩れるようにシーツに身を落とす。

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