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似た者同士。

「ねぇ、ちょっと聞いてよ!」  サーシャは前のめりになると金切り声を上げた。 「いったいどうしたっていうの? サーシャ」  イブリンが宥めるために彼女の手の甲をそっと撫で、そっと尋ねた。 「だってね、ガストンったらちっとも女性とスキャンダルにならないのよ?」  また始まった。  まるでそう言うように、ガストンはぐるりと目を回した。  ヴィンセントは彼の広い肩を叩き、同情する。 「あの、お待たせしました」  そこにセシルが紅茶とクッキーを持って登場した。  するとサーシャは大きなため息をつき、現れたヴィンセントの許婚を見やる。 「いいわよねぇ、イブリンは。こんなに可愛らしい許婚がいるんだもの」 「えっ?」  これにはセシルが反応した。顔を上げてそれぞれの様子を窺う。 「わたしだってお嫁さんとお料理をしてみたいわ」  ぼそり。これまでいきり立っていた彼女は悲しそうに顔を俯け、そう言った。 「まずい。おい、早く母上を止めろ」  ガストンは小声でヴィンセントに話しかけてくる。  いったいどういうことかと思った次の瞬間だった。 「あの、サーシャはお料理が作りたいんですか?」  セシルは項垂れるサーシャにそっと歩み寄り、尋ねた。 「おい、早く母上を止めてくれ」  焦るガストンを尻目に、サーシャは大きく頷いている。  いったいどういうことなのかと眉根を寄せ、二人の様子を見ていると、セシルは顔を上げた。何やら決断したようだ。 「そういうことでしたら僕が一緒にお料理しましょうか」  セシルがにっこり微笑んで提案した。 「――あ」  そこでヴィンセントはガストンがなぜ母上を止めろと焦っていたのかを理解した。 「本当に? そうしてくれるの?」  明るい表情でセシルの手を握っている。  ヴィンセントは急いでその華奢な腰に腕を回した。  細い身体をしっかり抱きしめる。 「えっ? えっ?」  ヴィンセントの腕の中でセシルは困惑気味だ。  サーシャとヴィンセントを交互に見つめている。 「そうよね、やっぱりダメよね~」  サーシャは静かにため息をついた。そして――。 「こうなったら、お嫁さんを探しましょう、ガストン!」  いくわよ! 彼女はそう言って部屋を出る。 「母上、もう好きにさせてください」  ガストンの気弱な声が廊下に木霊する。 「――――」  静かになったこの広間。  未だセシルはヴィンセントの腕の中にずっぽりと入っている。 「あの、ヴィンセント?」 「……ふふ。どうやらみんな似た者同士ね」  イブリンが微笑を漏らした。 (ああ、そうだ。みんなこの可愛らしいセシルが好きなんだ)  ヴィンセントは心の中で同意した。 《似た者同士。*END》

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