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にーい
麗しい顔に相応しく大学内でもモテモテの一条君。
一年の頃から「一晩の相手でも良いから、貴方が私を好きでなくても良いから付き合ってくれ」とよく声をかけられるらしい。
しかし彼本人は好きでもない人と付き合うのもセックスするのも嫌で、誘いは全て断っていたそんな中、先日とても厄介な女の子に告白されたらしい。
何を言っても諦めない彼女にほとほと困った一条君は、とんでもない嘘をついた。
男と付き合っている、と。
こうなりゃ自棄だとばかりに嘘に嘘を塗り重ねた一条君。
大学の友人の名を出したらすぐにバレると思い俺の名前を出し、気が付いた時には
”引っ越した時から優しくしてくれる隣人の吉田さんのことが好きになって、アタックしまくった結果遂に結ばれたから、離れられるわけがない!!!”
的なことを口走っていたらしい。
ほら吹きも良いところだが、必死に言葉を紡いだのが功を制して彼女は帰っていった。
ところがどっこい、彼女はとても強かだった。
翌日、再び一条君を呼び出した彼女は、相手つまり俺が本当に一条君に相応しいのか見極めるためデートに同行すると言い出した。
例の如く何を言っても折れない彼女は余りにも嫌がる一条君を訝しみ、昨日の話は嘘なのかと問う。
まさか嘘だなんて言えないから、しぶしぶ同行の許可を出してしまうも、このままじゃ吉田さんに迷惑をかけてしまう。
とはいえ白状したらまた彼女から連日告白されることになる。
そうやって悩んでいるうちに週末になってしまい、今日の早朝に彼女から連絡が来た。
“何時にどこで待ち合わせ?”
これは逃げられないと腹を括った一条君は、急いでウチのインターフォンを連打した。
………ということらしい。
ぽかーん、である。なんだその小説みたいな出来事。
「モテるのも大変だねー。」
「俺も焦ってて、色々迷惑かけちゃって本当にすいません!」
「吃驚しただけだから気にしないでいいよ。」
俺より大きな体を申し訳なさそうに縮めている一条君は、眉も八の字に垂れ下がっている。
まぁでも、おかげで理解はできた。
「すいません。やっぱり彼女のことは自分で何とかしま、」
しょんぼりと背中を向けた一条君に待ったをかけて、笑う。
「いいよ。」
「………えっ?」
俺の答えが意外だったのか、大きく目を見開いた顔が振り返る。
「彼氏のフリ、してあげる。」
隣人のよしみというには重すぎる気もするが、日本人なら誰だって、土下座の頼みは断れないもんだろ?
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