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「望んだものはただ、ひとつ」2-2
「いつも書物をお読みになっておられますが、今回は随分難しそうなものをお読みになっておられるのですね。お止めはいたしませんが、どうぞ適度に休憩もお取りください」
シェリダンが読む書物は半分以上が他国語で書かれたもので、女官としてある程度以上の教養を身に着けているエレーヌも何が何だかわからないものが多い。シェリダンが読むものは得るものも多いとわかってはいるが、彼を世話するエレーヌとしては釘を刺したいところなのだろう。わかって、シェリダンはティーカップを掴みながら苦笑した。
「すみません。ようやく手に入った貴重な書物なのですが、潤の文字、それも古文で書かれている原本の写しなので、やはり解読に時間がかかってしました」
まだ半分も読めていないと言うシェリダンにエレーヌは乾いた笑みを零した。エレーヌの記憶が確かであればシェリダンは潤の言葉を話せはするが文字は読み書きできなかったはず。宰相補佐であったシェリダンの元に来る書類はすでにオルシア文字に翻訳されており、必要なのは直接会った時の会話だったからだ。
「潤の古文……。それはまた難解な。しかし、なぜまた潤の書物など? 古文とおっしゃるからには、随分古いのでございましょう?」
潤の現代文で書かれた書物では駄目なのだろうか? とエレーヌとミーシャは顔を見合わせて首を傾げた。現代文であれば、たとえ潤の文字であったとしてもここまでシェリダンは苦戦しないであろうに。
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