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「望んだものはただ、ひとつ」2-5

 なるほど、とアルフレッドは深々とため息をついた。どうりでシェリダンの肩が固くなっているのか。王妃になってからゆったりと過ごさせることで身体の負担を減少させていたというのに、王妃にした直後――つまり宰相補佐時代に舞い戻っている。 「エレーヌ、明日にでも商人を呼べ」 「は、はい」  エレーヌが頷いたのを見て、アルフレッドはゆっくりとシェリダンを起こしにかかった。寝かせてあげたいとも思うが、ただでさえ食の細いシェリダンなのだから夕食は必ず食べさせたい。 「シェリダン」  そっと頬に触れれば、んっ……、と吐息を零してシェリダンの瞼が震える。そして幾度かの瞬きの後に、けぶるような菫の瞳がのぞいた。 「……ア、ル……?」  寝起きでボンヤリとしているシェリダンの唇にアルフレッドは己のそれを重ねる。幾度も啄んで、漸く唇を離した時シェリダンの思考はしっかりと目覚めていた。 「アル……。今、何時でしょうか?」  随分眠ってしまったと瞼をこすりながらシェリダンはアルフレッドの腕から身体を起こす。その手を瞼から退けてアルフレッドはシェリダンの指を食んだ。 「もう夕食の時間だ」  そんなに⁉ とシェリダンは慌てて立ち上がる。エレーヌたちに囲まれて寝乱れた髪や衣装を整えられるシェリダンを見つめ、アルフレッドはグルリと室内を見渡した。

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