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文化祭準備 ①

 がやがやと騒々しい空気の中、黙々と黒い幕を教室の壁に張っていく。隣で幕を持った哲夫が退屈そうに大あくびをした。それを横目で見る。 「おい。お前、もっときびきび動けや。太るぞ」 「ここまで来たらどんだけ太っても一緒やろ」 「諦めるんかい」 「悟りを開いた言うてくれ」 「何の悟りやねん」 「デブは諦めが肝心っちゅー悟り」 「アホか」  全くやる気のない哲夫以外、クラス内は活気で溢れていた。文化祭が翌日に迫って皆楽しそうに準備を進めている。  自分はイベント事に燃えるタイプではないが、頼まれれば尽力を尽くすことに抵抗はない。クラスの出し物が文化祭ではベタなお化け屋敷だったのだが、その手伝いを文句も言わずせっせとしているところだった。裏方を手伝う代わり、明日の当日は片付け以外何もしなくていいという約束もちゃっかり取り付けていた。 「お前、明日は由美ちゃんと回るんやろ?」 「おん。お前どうすんねん」 「俺、明日ずっとここや」 「ああ……そうやったな。ぬりかべやもんな、お前」 「そうやねん。初めて俺の体が脚光を浴びる時が来たわ」 「白いぬりかべにするんやろ? 光当たって輝けそうやな」  そんな会話をしながら、ふと、亜貴のことを思い出した。

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