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文化祭準備 ②
あれから。亜貴が彼女と別れた事実を直接聞けないままでいた。亜貴からも一切触れてこなかった。なので、俺がその事実を把握していると亜貴が分かっているのかも謎だった。まあ、一緒に過ごしているので、会話の端々でなんとなくお互い分かっているとは思うが。
実際、文化祭の話になった時も。
『亜貴、文化祭どうするん?』
哲夫が聞いたとき。
『ああ。俺、1日店の手伝いすんねん。一緒に回るやつおらへんから暇やし』
と普通に答えていた。彼女の『か』の字も出なかった。
亜貴は人望が厚いので友達も多い。一緒に回ろうと思えば相手に困ることはないだろうが。たぶん、店の手伝いを頼まれて頼まれた分全て快諾したのだろう。お人好しの亜貴らしかった。
「そういやさぁ、亜貴のクラス何するか聞いた?」
「確かカフェやなかった?」
「おん。やけど、メイドカフェらしいで」
「まじか」
「あのクラス、可愛い子多いからなぁ。ええよなぁ。ぬりかべやなかったら行くねんけどなぁ」
「ぬりかべのまま行ったらええやん」
「お前、ぬりかべに優しくしてくれるメイドがおるか」
「変わり種のメイドもおるかもしれんやろ。オカルト好きとか」
「……ぬりかべってオカルトに入るん?」
「……どうやろな」
と身のない会話をしながらもなんとか自分担当の準備を終わらせた。他もちょこちょこと手伝いつつ、夜7時頃には帰宅を許された。
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