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文化祭 ③

「ちょお、洋介!! どうしたん?? 俺、大丈夫やから!!」 「…………」 「洋介!! 由美ちゃん、大丈夫なん??」 「…………」 「おい、なんとか言えやっ! 洋介!!」  後ろでぎゃんぎゃん騒ぐ亜貴を完全に無視してずんずんと廊下を歩いた。  保健室の扉を開くと、無理やりのように亜貴を中へ押し込む。 「あら、どうしたん?」  保健医の先生が女装した亜貴に全く動じずに聞いてきた。 「こいつ、熱あるんですけど。休ませてもらえますか?」 「ちょ、洋介! 大丈夫や言うてるやろ! 大したことないねんって」 「何言うてんねん。お前、昨日から熱あったやろ? 気づいてんのにほったらかしにするからふらつくくらい熱上がんねん!」 「やけど、俺が抜けたら困るやろうし」 「そんなん気にしてる場合ちゃうやろが。ほんま、お前は昔から人優先して無理するとこ変わらへんな。慈善事業もええ加減にせえよ!」 「そんな言い方することないやろっ!」 「はいはいっ! 2人とも落ち着いて~! そんな興奮したら血圧も上がるで」 「…………」  先生に止められて2人とも押し黙った。先生が亜貴に寄ってきておでこに手を当てる。 「あら。ほんまやなぁ。結構あるわ、熱。すぐに帰ってもええくらいのレベルやけど。先に休んだ方がええかもな」  ほら、ベッド。先生にそう促されては亜貴も文句が言えなかったようだった。渋々ベッドへと向かい、そのまま横になった。 「まず熱計ってみよか。あんまり高いようやったら薬飲んだ方がええかもな。水分も取らなあかんで」  そう言ってテキパキと亜貴の看護を始める先生の後ろ姿を見ていたが、そのまま何も言わずに保健室を後にした。  その足で急いで亜貴のクラスへと戻る。  自分が勝手に人員を削ってしまったのだから、手伝わないわけにはいかないだろう(女装はせえへんけど)。  結局、俺はそのまま亜貴のクラスの出し物を文化祭の終了時刻まで手伝うこととなった。

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