20 / 33

保健室で ①

 片付けがすっかり終わった学校内は昼間の賑やかな雰囲気とは対象的に静かでどこか寂しげな空気を放っていた。生徒たちも名残惜しそうにしばらく残っていたが、徐々に帰宅していった。  そんな中、俺は亜貴のクラスと自分のクラスの片付けを手伝った後、亜貴の荷物と着替えも持って保健室へと向かった。その頃には校内にはほとんど人が残っていなかった。  さっきは急いでいたためノックもせずに入ってしまったことを反省しつつ、今度はきちんとノックした。が、返事はなかった。 「失礼しまーす……」  一応挨拶をしながらドアを開けて中へと入った。保健医の先生は席を外しているのか不在だった。カーテンで仕切られた方のベッドへと近付く。 「亜貴?」  名前を呼んでみたが返事はなかった。そっとカーテンを開いて覗く。  亜貴はメイドの格好のままベッドに横たわっていた。呼吸が荒いこともなく、気持ち良さそうに寝息を立てていた。カーテンの内側に滑り込むと、亜貴の額に手を乗せる。  下がったな。  まだ少し熱かったが、微熱ぐらいには下がったようだった。ほっとして、亜貴を見下ろす。  昨日感じた違和感は間違っていなかったらしい。  『慈善事業』が好きな亜貴は、自分の体調が優れなくてもそれを隠してでも無理するようなところがあった。他人には分からないような微妙なサイン。  小さい頃から亜貴を見てきた自分だからこそ気づくことができた。というか。自分の勘が合っていたことにホッとした。

ともだちにシェアしよう!