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遅い反抗期

 翌日から亜貴は迎えに来なくなった。お互いの家の行き来も途絶えた。昼食も一緒に食べなくなり、学校でもほとんど顔を合わせることはなかった。亜貴が自分を避けているのは明らかだった。 「喧嘩でもしたん?」  母親にも、哲夫にも、その他大勢にも同じことを聞かれた。 「ちょお、遅い反抗期やねん」  と適当に答えた。その『遅い反抗期』が長く続くにつれ、誰も何も言わなくなった。まるで、最初から亜貴と俺は他人同士だったかのように。2人が一緒にいないことを疑問に思う者は誰もいなくなった。  俺は亜貴のことについては何も考えないように、目前に迫る受験にだけただ集中した。  そうして冬休みに入り年が明け、センター試験、各大学受験とあっという間に時は過ぎて行った。気づくと2月になっており、高校生活も残り僅かとなっていた。  周りの合否報告が耳に入る中、自分も希望の大学は全て受験が終わり、結果を待つのみとなっていた。亜貴とは相変わらずほとんど口をきかない日が続いていた。  これで良かったのだと自分に言い聞かせる。亜貴のためにも。自分のためにも。 「津田くん」  学校の帰り道に突然後ろから声をかけられて振り返ると。 「……おお」  由美が立っていた。 「どうしたん?」 「別に。津田くんが歩いてんのが見えてん」  そう言って、由美が隣に並んだ。『洋介』ではなく『津田くん』と呼び方が変わったことに、時間の流れを感じた。少しだけ寂しく感じる。 「久しぶりやね。津田くんと喋るの」 「そうやな。あれから学校で喋るには人目があったからな」 「……ほんまはね、津田くんに話しておきたいことがあったんやけど」 「何?」  すると、由美は歩きながら世間話でもするように淡々と話し始めた。

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