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紫の章8

 葵がびっくりして固まっていると、グアンはニコリと笑って話を続けた。 「青龍様、ご挨拶が遅れて大変申し訳ありません。といいますのも、青龍様は発見され次第直ぐに陛下の元へお連れしなくてはならない、という決まりがございます。 なにも言わず、ここまでお連れする事になった事、深くお詫び申し上げます」  グアンは深々と胸に手を当てたまままお辞儀をする。 「改めまして、私は星見の一族の長を務めさせて頂いております、グアンと申します。 我らが一族は代々青龍降臨の際、お世話係をさせていただく役割を頂いております。 星見の力は初代青龍様が我らに授けてくださったもの。どうか(しもべ)として、我々をお使いください 青龍様がお言葉を理解しておりますのも、私と陛下は存じております。 代々皇帝と星見の一族の族長のみが読む事を許される機密文書『青龍天綱』に書かれておりましたので」    すると、フェイロンのあの態度は、全て葵が言葉を理解していると分かっていてだったのか。 (嫌な感じだとは思ったけど、とんでもなく嫌な奴じゃないか) 青龍様、とグアンが再び話し続ける。 「これから、僭越ながら何点かお願いがございます。もし、宜しければお返事の合図を決めさせて頂いてもよろしいでしょうか?肯定のときは尾で一回床を叩く、否定の時は尾を二回続けて床を叩く、というのはいかがでしょう?」  了解の意で葵が一回尾を振ってバシンと音を立てると、グアンはなんとも言えず嬉しそうな顔で、胸の星に手を当てる。  どうやら感動しているらしい。 「おぉ、本当に言葉がお分かりなのですね……いや、勿論存じ上げておりましたが」  紅潮した顔でゴホンと咳払いをすると、気を取り直したように話を続けた。 「では…『青龍天綱』には、青龍様はこの世界の者ではないが、青龍様の法力で言葉が通じると書いてありました。ただし、混乱の最中にいるはずである、とも。どうでしょう?これに間違いございませんでしょうか?」  驚いた。まさに今の葵の状況である。  頷く代わりに葵はパシリと一つ床を叩いた。 「成る程。よろしければ、まずこの世界の事について、お話しさせて頂きます。 我がロンワン国家は初代青龍様が、ロンワン王と契約した事からはじまります。紫龍草を絶えず咲かせる代わりに、青龍は国にあらゆる祝福を与えるという契約でございます。 この契約は国ではなく王と契約している為、その王が代替わりすると、青龍も国を離れます。 ときおり龍王と言われる、王気に満ちた人物が王になると、新たに青龍が降臨なさってロンワン王と契約すると言われていますが、今回青龍様がいらっしゃる前は第18代ロンワン王の時が最後の青龍降臨の記録となっておりますので、実に十四代ぶりでございます。 あ!別に責めているわけではございませんっ!それほど、おめでたい事であると申したいだけです!!」  成る程。グアンはなかなか現れない青龍に思うところがあったらしい。

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