フェイロンは葵を見ると、大きく目を見開いた。 「お前はっ……！？」 　葵が更に寝台に一歩近づくと、フェイロンは大声で叫び声をあげる。 「く！来るな！！やめろっ…！！近づくなぁぁっ！！」 　フェイロンの全力の拒絶を目の当たりにし、葵は頭から冷水を浴びせられた気分だった。 　よく考えたら当たり前の事だ。得体の知れない男が突如寝室に現れて、朦朧としているのを良いことに襲いかかろうとしているのだ。 　フェイロンにとっては、先程の孫娘と葵は何も変わらない侵入者にしか過ぎない。 (よく来たと、抱き寄せられ、キスでもしてくれると思っていたのか？) 　自分の甘い考えに自嘲した。だが、それでも…… 　葵はそのまま歩みを止めず、一歩ずつ寝台に近づく。 「止めろっ！近づくんじゃないっ……！！」 　フェイロンは必死に手を振って距離を取ろうとするが、オメガの誘惑香でうまく動けないようだった。 　オメガの誘惑香を間近に嗅いで抗えるアルファは基本的にいない。実際元の世界では、オメガが故意に誘惑香をアルファに嗅がせて行為に及ぶと、逆レイプとして性犯罪に問われる事もあった。 　 「やめろっ！！やめてくれっ……！！」 　フェイロンの悲痛な叫びが響き渡る。それでも、葵は寝台に上り、きつくシーツを握っている手にそっと自分の手を添える。途端そこから甘い痺れが全身に広がった。 　至近距離で嗅ぐフェイロンの発情した香りは、脳髄が痺れるように甘く、息を吐き出すだけでも感じてしまう。 　あさましい奴だな、とクロの声が聞こえた気がした。 （そうなんだ、俺はあさましい奴なんだよ） 　フェイロンを救うためとか、いくら言い訳したって、結局、一回でもいいから好きな人に抱いてもらいたいだけ……。 「っクソッ！くるなぁっ……！」 　いちいちフェイロンの言葉に傷ついて、でも、これからもっとフェイロンを傷つける…… 「っフェイロン、抱いて……」 　震える手でフェイロンの頬に手を添えて、フェイロンの唇に自分のそれを重ねた。わずかに開いた唇をそっと食むと驚くほど甘い味がする。もっと味わいたくなって唇の間からフェイロンの舌を探し当てチュっと吸い上げた。 「っん……っん……」 　葵はその甘さに赤ん坊がミルクを吸うように夢中で吸い続ける。蕩けるような甘さと濃厚な香りが口いっぱいに広がって堪らなく気持ちいい。 　途端、フェイロンの肩がビクンと揺れた。グゥゥと喉の奥から唸り声が聞こえたと思うと、葵を寝台に乱暴に押し倒し噛みつくようなキスをしてきた。 　歯と歯が当たり、痺れるような痛みに驚いたところに、フェイロンが舌を捻じ込み、上顎から歯の裏まで縦横無尽に貪られる。 　吸っていたはずの舌も、逆に執拗に吸われ、溢れる唾液も全て啜られ葵は息苦しさに思わず顔を左右に揺らそうとするが、顎をがっしり掴まれ、まったく許してもらえない。 　濃厚すぎる口づけに、本当に食べられてしまうのではないかと錯覚し、思わず必死にフェイロンの肩に爪を立てる。 　フェイロンは動じず、ますます傍若無人に葵の口の中を支配し、葵の膝の間に乱暴に足を入れ込むと、腰を痛いほど強くかき抱く。 　葵はその全てにどうしようも無いほど感じ、口づけだけで達してしまいそうになってしまう。 　腰に回された手があやしく蠢き、尻たぶを強く掴まれると、とうとう葵は腰を弾ませ先端部分から白濁を吐き出した。 「っんあぁぁ！」