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★黒の章24

 フェイロンは激情のままに激しくピストンを繰り返し、荒々しく口づけてくる。フェイロンの熱い舌が葵の全てを食い尽くすかのように口内を蹂躙し、葵は息苦しさと同時に堪らない幸福感を感じていた。 「んはぁっん!」 達し過ぎて最早先端から透明な汁が糸を引くようにしかでない。 「アオッ!アオッ!俺のアオ……っ!」  暫くピストンを続けた後、フェイロンもまた葵の中で果てた。  暫くお互い肩で息をしながら見つめ合う。汗で濡れた葵の前髪をフェイロンがゆっくりとすくって、チュッと額に唇が軽く触れる。  先程あんなに激しいキスをされたのに、たったそれだけのことが、顔から火を吹きそうなほど恥ずかしかった。 「アオ……お前は人間の時には、何という名前だったのだ?」 予想もしていなかったことを聞かれて、葵は驚いてフェイロンをまじまじと見つめる。 「ん?人間だったのだろう?名前があるのではないか?」 そう、名前は、ある。 ただ、今更その名をフェイロンが呼ぶのかと思うと抵抗がある。今と大して変わらないと言えばそれまでだが……何だかそれは、それはとても…… 「は、恥ずかしい……」 「う……っ!」  頬を染めて思わず顔を背けると、またしても葵の中のフェイロンが脈打った。 「っあん…」   「だ、だから!お前が悪いのだ!わざとなのか!?  い、いや、すまなかった。頼む。俺が冷静でいられるうちに教えてくれないか?」  必死に頼んでくるフェイロンに、葵は顔を背けたままボソッと呟く。 「葵……」 「ん?」 「ア、オ、イ、だよ。今と、あんまり、変わらないかも……」 「なんと!!お前は葵という名前だったのか!! 凄い偶然だなっ。いや、神の采配か……」 「う、うん。フェイロンと同じようにアオちゃんって呼ぶ奴が元の世界にもいたからすごくビックリしちゃったよ……」 「ほぉーー。で、そいつは男か?女か?」 「え……男……だけど」 「ほぉーーほぉーー」  フェイロンがゆっくりと顔を近づけて、まっすぐこちらを見て呟く。 「葵」  脳髄に響く、低い声が、腰に来た。 「んん!」 「お……っと、なんだ葵、可愛いな。名前を呼ばれて感じてしまったのか……本当にお前は……」  また愛しげに前髪を弄られたが、ふとフェイロンが真面目な顔になって言った。 「葵、俺は龍の姿のお前も可愛くて好きだったが、人の姿を見たらもうダメだ。お前の美しい魂がこの美しい身体に宿っているのかと思うと感動で心が震える。 お前を手放してやれる気がしない……。その瞳も髪も鼻も口も、このたおやかな肢体も……全てを俺のものにしたい。 お前は、今日人として会ったばかりのオレが、こんな事を言うなんて頭がおかしいと思うかもしれないが、俺は今すぐにでもお前に噛み付いて、俺のものという『証』とやらを付けたい……ダメか?」

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