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青の章3

 意外な事実が発覚して、葵は困惑してしまう。毎日のように薬店に現れる千尋には、少なからず好意を持ってもらっている自覚はあったが、まさかそんな風に想われていたとは夢にも思わなかった。 「それでさ、これも分かってる?アオちゃん。俺、オメガだけどさ、ベータって思ってた時もアオちゃん好きだったし、今アオちゃんがオメガって分かっても、俺はアオちゃんが好きだよ」  アオちゃんはもう王様好きになっちゃったけどね、と寂しそうに付け足す。 「だからさ、俺が何を言いたいかというとさ、人を好きになるって、アルファだからとか、オメガだからとか、王様だからとか、青龍だからとか、そういう事じゃないでしょ? 俺はアオちゃんと全然違う世界で生まれても多分アオちゃんの事好きになったよ。そりゃあ、やっぱり俺もすげぇいい匂いさせるアルファがすげぇイケメンだったらさ、あ、この人いいかも♡とは思うけど……それって結局きっかけにしかならないじゃん。俺、アオちゃんと初めて会った時、すごく綺麗な人だなあって思って、でもアルファじゃないんだ~って残念だったけど、毎日のようにアオちゃんに会いに行って、アオちゃんの不器用な優しさを知って、それでどんどん好きになったんだよ」  俺の煎じ薬に蜂蜜を入れといてくれたりね、と千尋はウィンクしながら蜂蜜入りの紅茶を飲むと、子供に言い聞かせるように囁いた。 「アオちゃんはアルファだからその王様が好き?王様だから?王様はアオちゃんがオメガだから好きなの?青龍だから?そういうの全部取っ払って考えてごらんよ。アオちゃんはいつも考えすぎなんだよ」 「っフェイロンは、俺のこと、好きとは……まだ言ってない……」 「っは!本気で言ってんの!?番にしたいって時点で大好きに決まってんじゃん。流石にそれは王様が可哀相だよ。アオちゃんが好きになった王様はさ~、アオちゃんが妖魔ってだけで嫌いになるような人なの?」 「……そんな事ない……かも」 「ほぉら!それにさ~、逆の立場になって考えてみなよ。もし王様がさ、自分は妖魔だから、もう会えないってアオちゃんの前から去ったらどうする?」 「……追いかける。すごい、追いかける……」 「ほら!ほら!そうじゃん!アオちゃんが相手の事を思ってした行動って、実はすごく残酷だって分かってる?かけてもいいけど、今、王様はアオちゃんが妖魔だった事よりも、アオちゃんがいなくなった事に大打撃を受けてると思うよ」 「……っ!」  顔を真っ赤にして涙を浮かべる葵を、千尋が卓袱台ごしに抱きしめてくれる。 「あ~、ごめん。いじめすぎたね。でも、アオちゃん、好きな人が突然いなくなるのって凄くつらいんだよ」  ハッと千尋の顔を見る。実感のこもった口調でそう言った千尋は、静かな瞳で葵を見ていた。 「だからね、アオちゃんが王様を好きなら、王様につらい思いをさせちゃだめだ」 「でも……俺……」  決壊が崩れたように、涙が止めどなく溢れ出す。 「本当に……フェイロンに……これ以上……辛い思いさせたくなくて……俺……妖魔……っ」  肩を震わせながらしゃくりをあげて泣く葵を、千尋は赤子にするように背中をポンポンたたいてくれる。 「うんうん、好きな人に辛い思いさせたくないもんね。でもさーー」  低い声で千尋が呟く。 「そもそも、そのクロって奴、信用出来るの?」

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