51 / 86

青の章4

「え?」 「だってさ、アオちゃんの事を妖魔って言ってんの、そのクロって奴しかいないんでしょ?それってなんかおかしくない?」  そう言われてみると、確かにその通りだった。だが、葵はクロに仲間と言われてなぜかすんなり受け入れられたのも事実だ。 「とにかくさ、アオちゃんは王様ともそのクロって奴とも、もっと話した方がいいよ」 「うん・・・・・・」  返事はしたものの、やはりフェイロンの顔を見るのが怖かった。もし、全力で拒否されてしまったら・・・・・・。  透き通った紅茶に映し出された自分は、どこか迷子のような顔をしている。 「もう!あのさ、そのアオちゃんの見た目と反する自信のなさってあれかね?やっぱり、自分がおじいさんに愛されてなかったって思ってる事から来てたりする?」  予想外の方向に話が飛んで、葵は動揺して紅茶のカップを落としそうになる。 「あのさ、俺、アオちゃんのおじいちゃんには会った事ないけど、うちの店長はアオちゃんのおじいちゃんの事知っててさ、凄くいい人だったって言ってたけど、亡くなる直前は何だかお孫さんとギクシャクしてたような気がするって言ってたんだ。 俺がここに通いだしてからも、アオちゃん、おじいちゃんの話題を不自然な程出さなかったからさ、こりゃ、なんかあるなあ~と思って、それであの花の話でしょ」  あの花とは、勿論葵があちらの世界に行くときに食べた青紫のトリカブトの花の事だ。祖父が食べろという手紙を残していた事も、千尋には先ほどはじめから全部説明した。 「実はさ、俺その手紙見たんだ」 そう言われてみると、先程床には手紙のようなものは落ちてからいなかった。さらに言えばトリカブトが入っていた箱も綺麗に隅に置かれていた。 「それでさ、そんな手紙が置いてあった横に青紫の花弁が一、二枚落ちてたからさ、俺試しに食べたんだ」 「え!?」 なんという大胆なことを。非難する声音で驚くと、千尋が唇を尖らせる。 「だって、しょうがないじゃない。アオちゃんは家中どこ見てもいなくて、屋根裏部屋に行ってみれば明らかに何かあった痕跡にあの手紙でしょ?アオちゃんはぜったいこれを食べたんだな〜って思ったから、俺も食べたら何か分かるかな〜って思って」 言いたい事は分かるが、それを実際に行動に移すとはかなり大胆だ。千尋は葵が思っているよりも葵のことを慕っていてくれていたんだと、改めて実感した。 「まぁ、それでね、結果としてなんにも無かったわけ。すんごく不味かったけど、別にそれだけで毒でもなんでもなかったよ」 「え?」 「アオちゃんだって、気付いてるんじゃない?それともわざと考えないようにしてる? あれ、たぶんトリカブトじゃないよ。紫龍草ってやつじゃない?」

ともだちにシェアしよう!