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青の章17

気付くとグアンが部屋の壁際でぐったりと横たわっている。 「グアンっ!」  葵は大声で呼びかけたが反応はない。意識を失っているようだった。 「まさかグアンにこんな度胸があるとは思わなかった。いやに大人しくついてきたと思ったら……。」  目の前には血走った瞳のホンが仁王立ちしている。グアンを壁まで吹き飛ばしたのはホンなのだろう。頭を強く打ち付けたのかもしれない。 「幼なじみじゃないのか!?なんて事するんだ!?」  ホンはチラリと横目でグアンの方を見るが、その瞳はぞっとするほど冷たかった。 「そうですね、仲はいいですよ。グアンはいつも青龍の話をしていました。あまりにも青龍に焦がれすぎて、あなたがなかなか降臨しない間、恨み言さえ言うようになった。俺達は満たされない者同士とても気があった。グアンなら、俺の気持ちも分かると思うんですけどね。こいつに俺の行動を止める権利は無いと思うな」 「そんな……」 「それに今は、何でも相談出来る友人は別にいますしね。な、ヤン」  ホンが呼びかけると、どこからともなく火トカゲのヤンがふわりとホンの肩に飛び降りた。   (どこから現れたんだ?)  突然、どこからともなく現れる登場の仕方には覚えがあった。何となく嫌な予感がする。 「おしゃべりしている暇はないんじゃないか、ホン。早く(つがい)になった方がいい。いつまた邪魔が入るか分からないぞ 」  驚くべき事に、ヤンがホンに話しかけた。今まで喋る事は出来ないとばかり思っていた。しかも、この声には聞き覚えがある。 「クローー 」  葵が絞りだすように名前を呼ぶと、ヤンが薄目を開けてこちらを見た。 「あの時、俺と山に戻っていれば、こんな事にはならないんで済んだんですけどね」 そう言いながら、まるで闇から生まれ出たように見覚えのある人間の姿に変化する。 「お前が、ホンを操ったのか?」 信じたくない気持ちで問いかけたが、ヤンの姿をしていたクロはあっさりと頷いた。 「操ったというのは少し人聞きが悪い。俺はいつも、そいつが抱えてる欲望を後押ししてやるだけですよ」

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