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五藤くんの元カノ 3

「ほら、今日は二年生が社外授業でいないし。――ランチ御膳ゲットしたわよ。美味しかった~」  ランチ御膳は、定食より八十円高いけど美味しくて数が少ないから人気が高く、早々に売り切れてしまうのだ。 「で、それもあるけど、ちょっと午前中の雑用が残ってるから」 「そっか」  そう。  さっき佐尾先生が言った通り、二年生、五藤くん達の学年は校外授業に出かけている。  だから、今朝は二人分の弁当を用意する必要もなくて、夕飯の残り物を詰めてきた。茶色いおかずばかりなのはそのためだ。  昼休み、五藤くんと一緒に過ごすのは凄く楽しい。それは大切な時間で、僕にとってはなくてはならないものになっている。  けれど、時々落ち着かなくて逃げ出したくなる瞬間もある。自分でもよくわからない。  別に、ペットみたいに頬を触られたり抱き締められたりするのは嫌じゃない。  マモルくんに見つかったらと思うとヒヤヒヤするけど、それは五藤くんが上手く誤魔化してくれるだろうとか、半分は気楽に考えている。  この二カ月近く、五藤くんと過ごす時間に癒やされてきた。居心地良くて、生徒の前で無理してる自分を忘れられた。    でも、今はただ楽しいだけじゃなくなってきているのが、なんだかそれがちょっぴり切なかった。  ただ、五藤くんは僕と一緒に居てリラックスしてるみたいだし、僕のこの感情の変化は気付いてないだろうな。  まだ弁当の中身は残っていたけれど、僕は手早く片付けて、職員室へ戻った佐尾先生に続いて自席に戻った。  真面目に書類に向かっている佐尾先生に、僕は勇気を出して訊いてみた。 「あのさ、仲良しの友達同士なら身体に触るのって、普通のことかな。あ、ハグとかじゃなくて」    佐尾先生は書類に目を落としたまま、んー? と言った。 「ボディ・タッチね。触るって、例えばどんな風に?」 「ほっぺた触りまくったり、ぬいぐるみみたいに抱き締めたり」 「女子なら別に普通じゃない?」  だよね~。女子ってみんなそんな感じだよね。僕もそう思う。 「女子、じゃなくで男子だったらどうかな」 「男子が女子にタッチするの?!」  佐尾先生の眉間にしわが寄った。 「違う違う! どっちも、男子で……」  しかも、片方は成人男子だけど。 「えっ!? 男子が男子にするの?」 「うん。……やっぱり、変だよね」 「んん~……?」  佐尾先生はちょっと驚きつつも、真剣に考えてくれているみたいだ。 「どっちも厳つい男子だと、ちょっと引いちゃうわよね、視覚的にも。でも片方が小っちゃかったりぽっちゃりだったりの可愛いタイプなら、別におかしくないと思うわよ。なんていうか、小動物を愛でる感覚でしょ」 「小動物?」  佐尾先生はニヤリと笑った。 「ちょっとー、やだ、もしかしてつっくんの実体験の話? 仲良くなった男子生徒にタッチされちゃってたりするの?」 「えっ! ……いやいやまっさか~、そんなわけないでしょ、変なこと言わないでよ、あははははは」 「怪しい……」  佐尾先生にジト目を向けられて、僕は誤魔化すように口笛を吹いた。そうこうしているうちに昼休み終了のベルが鳴った。

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