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五藤くんの元カノ 7
こうやって抱き締められるのもドキドキするけど、さっきよりは数倍落ち着くし、安心する。
五藤くんが反省しているのをいいことに、僕は、えいっと両手を伸ばして、五藤くんにぎゅっと抱きついた。
「おい」
「いいでしょ、僕ばっかりやられっぱなしじゃ不公平だもん。なんか文句ある?」
「いや、ないけど」
五藤くんは何か言いたげだったけど、静かになった。
向かい合ってるから、僕の顔のすぐ右上に五藤くんの顔がある。黒髪が頬に触れて、くすぐったい。
僕の心臓は相変わらず鼓動を刻んでいたけど、更に、どんどん速くなって……。こんなにぴったりくっついたら、僕の胸のドキドキが聞こえちゃうかもしれない。
あれ?
五藤くんの肩を掴んでる僕の右腕が、やけにドクドクいってる。
ドクドクいってるのは僕の心臓で、心臓の位置は左側だよね。なのになんで右腕がドクドクいって……。
――この鼓動は僕じゃない。これは、五藤くんの……。
五藤くんの心臓がドクドクいってるんだ。それに、身体もすごく熱い。
自分の身体が冷めてきたから良くわかった。
「あ、あの、五藤くん……わっ!」
僕が身体を起そうとしたら、強い力で引き戻された。そしてますますきつく拘束される。
「ちょっ、苦しいよ」
「――もうちょっと。充電させろよ」
「充電って」
僕を抱きしめてると、チャージされるの? 元気の素とか?
「……じゃあ、僕も充電する」
「ん」
さっきは確かに怖かったけど、好きな人に抱き締められてるなんて、すごくラッキーだ。日頃頑張ってる御褒美をもらえた気分だ。
凄い……気持ちいい。
僕は次のベルが鳴るまで、五藤くんに身を任せた。
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