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想いが溢れて 4

「ごめんね、五藤くん。変なこと言って。びっくりしたよね」 「すっげえびっくりした……」  気持ちを言ってしまって僕はすっきりしたけど、五藤くんは怪我人なのに、こんなこと聞かされたら、すごく迷惑な状況なんじゃない、これって?  免疫が急低下して、怪我の治りが遅かったらどうしよう。  はあーっと耳もとで長いため息が聞こえた。優しい彼のことだ。どうやって僕を傷つけずに振ろうか、思案しているのかもしれない。 「誤解するな、嬉しくてびっくりしてんだよ」 「えっ……」  うそ、と思わず呟くと、五藤くんは僕のほっぺをキュッと摘まんで「嘘じゃねーぞ」と息を含んだ声で僕の耳元に囁いた。 「迷惑じゃないの……?」 「んなわけねえ」  五藤くんは腕をゆるめると、僕の身体をゆっくり引き離した。  僕は告白できて、正直ほっとしていたし、彼が迷惑に感じてないのがとにかく嬉しくて。彼に嫌われなければいい、それだけだった。  両腕をつかむ彼の手の平が熱かった。至近距離で見つめ合う。彼の瞳はどこまでも深い色で、きらきらしている。ずっとこの瞳を見つめていたいと思った。  第一段階を超えて極度の緊張感から解放された僕は、少し大胆になっていたのだと思う。彼の顔にかかる黒髪をそっと指ですいた。 「五藤くんのこの綺麗な髪、触ってみたかったんだ……」  硬いのかなと思ったら、意外に柔らかくてサラサラだ。僕はうっとりと、その手触りを堪能した。五藤くんは、僕にされるがままになっている。 「こんなの触って楽しいのか」 「うん」  五藤くんは「よっ」言うと、僕の身体を再び持ち上げてベッドの上に乗せた。 「ちょっ……」 「俺を跨いでここに座れ」 「ひぇっ」  ストン、と身体が着地した場所は、五藤くん足の上。っていうか、股間の上。そこに向き合うように座らされた。 「やっ、誰か来たら」 「ここは静かだから、足音でわかるから大丈夫だ」 「で、でも」  だってこの格好、すごく……エッチな体勢だよ?  これで僕が可愛いナースだったら、エッチなDVDの表紙とかになりそうな感じだよ!  なのに、五藤くんは少し意地悪な笑顔で平然としている。  僕はきっと顔が真っ赤になってる。顔も涙と鼻水で情けない状態だし、恥ずかしすぎる!  それにこの体勢、バランス保つの大変だ。五藤くんは怪我人だから寄りかかれないし。 「ね、やだよ、この格好」 「少しだけだから頑張れ。……なあ、おまえ、俺の事どんな風に好きなの」 「えっ……そ、それは」  五藤くんは真正面から僕をじっと見つめた。上に乗ってる僕の方が五藤くんより視線が高い。だから五藤くんが上目遣いになって、なんか、なんかエロイい!   なんで? 額に貼られたガーゼのせい? 「ほら、言って」 「い、いじわる……」  そんなこと恥ずかしくて言えないよ!  僕がまた涙目になってるの気づいてるくせに、なんで五藤くんこんなに意地悪なの。  僕を支えてる五藤くんの手が、ゴソゴソし始めた。 「ちょっ」  カーディガンの下に手を入れて、ワイシャツをスラックスから引き抜いている。 「やっ、なにやってんの」 「暑くね? ここ」 「だからって、――んっ」  僕が自分のシャツに気を取られている間に、柔らかいものがふにゅん、て僕の唇に当たった。      

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