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もやもや 3

「そうそう、ほら、佐尾先生人気だから、つっくんがファンに妬まれるっしょ」  あ、カジくんもいた。 「佐尾ちゃんとつっくん仲良しなんだね!」  マモルくん……。 「ご、ごめんね~。つっくんが可愛いこと言ってくれるものだから、嬉しくてつい。……あ、変な気は一切ないわよ! だってつっくんはみんなの可愛い愛されキャラだし!」  佐尾先生、それ、フォローしてくれてるつもりなのかな。  僕は五藤くんに捕まって宙に浮いてる状態だから、彼の表情は見えないけど、なんか、ちょっと様子が変だ。 「ね、五藤くん、もう下ろして」  昼休みを知らせるベルが鳴った。 「よし、昼飯だ。屋上行くぞ」 「わっ!」  五藤くんは米俵を担ぐように、僕の身体を抱えた。 「あっ、職員室にお弁当取りに行かなくちゃ、不安定で怖いし、ねえ、下ろしてよ」 「ダメ」 「ええー――」  僕は五藤くんに担がれたまま、廊下を移動する羽目になった。あああ、生徒達の好奇な視線が突き刺さる……。  逆さまの視界に、何やらコソコソ話してる佐尾先生とカジくんの姿が見えた。  察した者同士の会話……? やーめーてー。  その後ろで、マモルくんは僕にブンブン手を振っている。  僕も、揺られながら振り返した。  五藤くんはまるで通学鞄を肩にかけてるような感覚で、ひょいひょい階段を上がり、屋上の扉を開けた。さすがにその時は大変そうだったけど。 「よっこらせ」  現役DKとは思えないような掛け声で、五藤くんは僕をおろしてくれた。    でも、担がれていたせいで僕の足はふらついちゃって、給水塔の階段を自力で上がれない。  「なんか、力入んない」 「しょうがねえなあ」    五藤くんは再び僕を軽々持ち上げ脇に抱えると、給水塔を登った。でもなんか嬉しそう? 「わ、ちょっ、怖! 怖い!」  うっかり景色を見てしまい、肝が冷えた。  無事、給水塔のいつものランチスペースに降ろしてもらって、心底ホッとした。 「はあ……なんか疲れた。自分で歩かないと疲れるんだね……」  僕をずっと抱えていた五藤くんは、僕の頭に手の平を乗せてポンポンした。 「怖かったか?」 「だから、そう言ってたじゃん!」  僕がぶくってほっぺたを膨らませると、(ぷくじゃなくてぶく)僕は怒ってるつもりなのに、五藤くんはなんだか満足そうに僕の頭をナデナデした。 「もお~、僕怒ってるのに、なんで嬉しそうなの?」 「えっ?」  自覚がなかったのか、五藤くんは驚いてる。――もしかして、僕をからかって楽しんでるの? 「俺ってエスっ気あんのか……? いや、エムか……」 「え?」  五藤くんはうーん、となんか考え出して、僕を撫でる手をほっぺにずらし(僕の頬はますます膨らんでエサをパンパンに詰めてるリスみたいになってたけど)スリスリ撫でるから、僕の怒りはスッとダウンした。  両手で頬を挟まれて、一瞬見つめ合った後、五藤くんは僕の唇にチュって可愛いキスをした。 「待ってろ。弁当取ってくる」 「うん……」  鼻歌歌いながら階段降りてく五藤くんを見送りながら、僕はパタン、と横に倒れ込んだ。 「ずるい~~」  僕は再びもやもやもんもんしながら、五藤くんを待つのだった。

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