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もやもや 11
ってな感じで、皆一斉に僕に話しかけてくれるから、それに答えるので忙しい。
そしてE組は、五藤くん達三人以外の生徒達の席順が、ガラリと様変わりしていた。
女子全員が、前の席を陣取るのだ。そして、僕の世話を焼いてくれる。
「つっくん、夕べちゃんと髪乾かして寝た? 後ろが撥ねてるよ」って言った女子は、スプレーとコードレスのヘアアイロンをサッと取り出しササッと直してくれた。
僕の曲がったネクタイにツッコミを入れた女子は、「急いで締めたの?」と言ってはスッと直してくれた。
E組の女子の皆さんは、とにかく僕の世話を焼いてくれるのだ。細かく分類すると、最前列と二列目は「世話女房タイプ」が座り、三列目からはその様子を見て笑ったりツッコミを入れたりする。「見守りタイプ」
みんな、いいお嫁さんになりそう……。
でも、女子の皆さんに世話を焼かれている僕を、五藤くんがどう思っているのかは、イマイチわからない。
身だしなみを直してもらった僕は、お礼を言いつつ、教科書を開いた。
「ありがとね、今朝は寝坊しそうになって慌てて家出たから。――それじゃ、ええと、教科書の……」
廊下側の女子が心配そうに反応した。
「夕べ遅かったの? 夜更かししちゃった?」
「あ、うん。夕べは風が強かったから音が煩くてなかなか寝つかれなくて」
僕は頬をぽりぽりしつつ答えた。
「そういう時は、リラックスするのがいいのよね」
「ハーブティーのカモミールが効くらしいわよ」
「ホットミルクとかも」
「やだ、つっくんとホットミルク似合いすぎ! 萌える!」
女子が次々喋りだした。
「えっと、みんなありがとう。ぜひ参考にさせてもらうよ。――じゃ、教科書の二十八ページを開いて……」
みんな、親切に教えてくれるのは有難いんだけど、授業が進まないのは困るんだよな。
僕が黒板に板書を始めても、まだお喋りしてる女子もいる。教科書すら出していない子も。
「教科書出してください、ええと、二十八ページを……じゃあハヤシさん、読んでください」
教科書を開いていた女子に目をつけ、僕は指名した。なのに、「いいお嫁さん候補」の女子達のお喋りはまだ続いている。
あと数ヶ月で三年生に進級するのに、E組はいつもこんな調子だ。実際三年生になれば進学の話題も出てくるし実感が湧くんだろうけど。
僕が指名したハヤシさんが教科書を読み始めても、一部の女子のお喋りは止まらない。
もお~、みんなそんなにお喋りしたいなら昼休みか放課後まで待ってくれないかなあ。
いくら自由な自由学園でも、授業はちゃんと受けてほしい。学費がもったいないじゃないか。ほとんどの生徒は親御さんが学費を払っているんだろうし。
都立なら都から補助金が出るけど、この学園は私立だから学費はしっかりかかる。制服は無いし、学園指定の物は校章くらいだからその点は節約できるけど。
僕が指名したハヤシさんが淡々と音読している中、まだ女子達のお喋りは止まない。
こんな時、いつもは頼りになる五藤くんには助けてもらえない。
だって、五藤くんてばいつも、僕の授業中半分以上は寝てるんだもん!
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