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もやもや 12
そんな人が「静かにしろ」って注意したとしても、ちっとも説得力ないじゃん!
僕は思わず、むむむ……と、五藤くんへ恨めし気な視線を送ってしまった。今日も彼は机に突っ伏して、授業中の居眠りを堪能している。
すると、五藤くんの隣の席のカジくんとバチッと視線が合った。
僕は五藤くんを見てからカジくんに視線を戻し、助けを求めるように目で訴えた。
カジくんはボクの視線に気付き、驚いたように目を見開いた。そして隣でスヤスヤ眠る五藤くんを見た後、困ったように頭をかく。
僕が辛抱強くカジくんを見つめてると、彼は観念したように肩をすくめた。そして、付けていたイヤホンを抜いて立ち上がった。
「おーい、授業が進まないからつっくんが困ってんぞ。それに、ハヤシちゃんの可愛い声が聞こえねえっつーの」
カジくん……。
その彼の一声に、教室内がシン、と静まる。ハヤシさんも、ぽかんとした表情でカジくんを見た。
そして、お喋りが止まらなかった女子生徒達が、一斉に僕に向かって申し訳なさそうに手を合わせた。
「つっくんごめんね」
「授業の邪魔するつもりなかったんだけど、つい……」
「ごめんなさい!」
「泣かないで、つっくん!」
いや、まだ泣いてないけどね。
女子達はみんな僕に謝ってくれて、その後は授業終了まで、授業内容と関係ないことは話さなかった。その代わり、わからないことはどんどん質問してくれた。
なんか、E組じゃないみたい。E組でこんな風にA組みたいな授業ができるなんて信じられないくらい嬉しい。
後半、むくりと起き上がった五藤くんが、カジくんに耳打ちされていて、眉をしかめていたのが見えた。
「はあ……」
E組の授業が終わった後も、僕はしばらくぼーっとしてしまった。
なんか、感動してしまった。
五藤くんのおかげでE組の生徒達との距離は近づいていたけど、こんな風に授業でも一体感というか達成感を感じられる日が来るなんて。
それに、カジくんに凄く助けられた。最近はフレンドリーに話しかけてくれるけど、それは教室外だったから。
授業終了後すぐにカジくんにお礼を言いに行ったけど、授業が押した上に次の体育授業のために、みんな慌ただしく更衣室へ向かった。
カジくんは「別に俺は何もしてねえよ」って言ってくれた。五藤くんは、まだ寝ぼけてるのか既に廊下に出てしまっていて、言葉を交わせなかった。マモルくんはその隣で手を振ってくれたけど。
でも、E組の授業の後は必ず、五藤くんとアイコンタクトしてたから、なんだか物足りないなあ。
最近の僕は、すっかり贅沢になってしまったみたいだ。
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