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だから用心しろって言ったのに 7

 あ―……あれを見られてたか。(てゆーか、生徒に注目されてたもんなあ) 「あのね、あれは嫌がってたんじゃなくて、恥ずかしくて」 「なんで? なんであんな、学校に何しに来てるかわからないようなやつと仲良くするんだよ! あいつなんか、つっくんの授業で居眠りしてるんだろ!」  それも知ってるんだ!  真っ当すぎて言い返せない。でも……。  きっとトヨダくんは、何か事情があって、この自由学園に来たんだろうな、というのはわかった。 「んー、なんでだろうね、僕も不思議。でもね、五藤くんてああ見えて、すごく面倒見がいいんだよ。年下だけどお兄ちゃんぽくてさ」 「つっくんが末っ子だから?」  なんでそれも知ってるの? 怖! ――まあ、いっか。 「それも、あるのかな。僕が無理して孤高の教師? のフリしてたとき、ひょんなことからそれが五藤くんにバレちゃってさ。それがきっかけで仲良くなったんだ。それからは、僕は教師のくせに、彼に色んなグチを聞いてもらってるんだよ」 「グチ?」 「うん」 「その役目、俺じゃダメ?」  トヨダくんの目は真剣だった。この暗くて陰気な場所のせいで、もしかしたらトヨダくんは危ない子なのかも、とか思っちゃったけど、きっとそうじゃない。純粋に、僕を心配してくれてるんだ。  ただ、他の生徒より強烈に。 「――ダメ。それは俺の役目だから」 「えっ」 「誰?」  この、声は……嘘でしょ。 「こんな暗い場所で何してんだよ、話なら、一階のベンチですれば?」  出口に、背の高い人物のシルエットが見えた。 「五藤くん!」  僕の頭に『キタ――――!!』って、でっかい文字がどどーんと浮かんだ。  ――白馬に乗った王子様って、こんな感じで登場するのかも……いや、別にトヨダくんは悪者じゃないけどさ。 「おまえ、E組の……」 「あのさ、つっくんのお守りは大変だぞ。この人、二十四歳成人済みの大人のくせに、中身はまんま五歳児だから、おまえじゃ無理」  トヨダくんは、五藤くんの登場に一瞬怯んでいたけど、真っ直ぐに五藤くんを見返した。 「そんな、つっくんをバカにするような言い方やめろよ」 「トヨダく…」 「バカにしてないよ。大事にしてるけど? なあ、つっくん」    名前だけ、やけに優しく呼ばれて、じわって胸が熱くなる。それってズルいよ! 「うん……」 「それにさ。前からつっくんのこと見てたなら、なんで声かけなかったんだよ、あんなに無理してたのに」 「そ、それは」 「俺は、つっくんが無理してるの知って放っておけなくて、傍で支えたくなった。だからちょっかい出すし、絡むんだ。――おまえはずっと、ただ見てただけだろ」 「う……」  トヨダくんは黙ってしまった。いつのまにか、掴まれた手首は解放されていた。トヨダくんは出口へ向けて足を動かした。ああ、背中に哀愁を背負っている。 「トヨダくん、また話そうね、心配してくれてありがとう、嬉しかったよ」  振り向いたトヨダくんの目が、キラッと光って見えた。

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