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そこからお互いの持ち物を確認してみたが、どちらも寝間着姿でスマホもなく外部と連絡も取れない。
さらに手分けして部屋の探索を行ったが、出口になりそうな窓も扉も見つからず、途方に暮れ今に至る。
「クソ…」
広瀬は再度悪態をついた。
「(どうして俺がこんな目に…それもよりによってこいつと一緒だなんて…)」
広瀬はチラリと横目で、自分と幾分か距離を保ちベッドに座る牧野を見やった。
牧野は余程広瀬のことが苦手なのか、視線を決して合わせないように俯いていて、膝に置いた手を握り締めている。
牧野とは所謂幼馴染という間柄だった。
小学生の時、住んでいたマンションの隣の部屋に牧野が越してきた。
明るく活発でクラスでも人気者の広瀬とは対照的に、大人しくて体の弱かった牧野は転校してきてからもよく学校を休みがちで、その内気な性格と恥ずかしがりやな性分の為、自分から話しかけることが出来ないのも相まって友達が出来ずにいた。
だから、よく広瀬が牧野を誘い一緒に遊んでやったのだ。
広瀬は牧野のことを気に入っていたし、牧野も広瀬によく懐いていた。
だがその関係も中学に上がってすぐ、途切れてしまったのだが。
中学に入学してすぐ、牧野は体調を崩し、一週間ほど学校を休んだ。
そして次に登校した時にはクラス内ではすぐにグループが出来ており、同じクラスだった広瀬にも多くの新しい友達が出来ていた。
その為孤立してしまった牧野は、元来の性格から中々状況を打破することが出来ず、完全にクラス内で孤立してしまったのだ。
その様子を見て、広瀬はいつものように牧野を自らの輪に迎え入れようとしたが、新しい友人のあいつキモイよなという心無い一言と、それに次々と同調するクラスメイト達に圧倒されて、そうだな…と答えてしまったのだった。
その日からクラスの中でもヒエラルキーの頂点に立つグループが牧野をイジメるようになった。
そのグループには広瀬も属していて、自然と広瀬も牧野に対して嫌がらせを行うようになった。
『きもい』『うざい』『くさい』『邪魔』と罵るのは日常茶飯事で、暴力はなかったが、時にパシリにしたり、時に物を隠して笑ったこともあった。
もうそこには幼馴染として仲良く過ごした思い出はなく、不良といじめっこという痛々しい図が出来上がってしまっていた。
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