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「で、なんだよ。言いたいことがあるなら早く言え」 理解しがたい胸の痛みを掻き消すように、広瀬はわざと冷たく言い放った。 「う、うん…それが、さっき部屋を調べた時にこれがテーブルの上に置いてあって…」 わたわたしながら牧野が手の中のモノを広瀬に渡した。 それは名刺ぐらいの大きさカードで、全体的に真っ黒なそのカードの中心に記された一行の文章を目にした途端、広瀬はギョッとした。 『SEXしないと出られない』そんな言葉が白色のインクで印刷されていたのだ。 「…は?」 あまりに下品で異常な文章に、薄ら寒いものさえ感じる。 広瀬は黒いカードと牧野を交互に見やった。 これは、こいつとセックスしろってことなのか…?と上手く回らない頭で考える。 「マジきめぇ…」 口を開いて出た言葉に、一瞬、牧野が顔を曇らせたことに広瀬は気付かない。 「まさかとは思うけど、牧野お前このカードのこと真に受けてんじゃねーよな」 「ち、違うよ!ただ…ここから出るのに、何かヒントになるんじゃないのかと思って…」 「何がヒントだよ、こんなもんただの悪趣味な悪戯じゃねぇか!他に何かなかったのかよ!」 「あ、そこは…っ」 むしゃくしゃをぶつけるように声を荒げ、広瀬は立ち上がるとチェストの引き出しを乱暴に開けた。 すると一番上の引き出しに入っていたのはコンドームとローションだった。 「は?」 目を丸くしながら二段目と三段目の引き出しも開けてみる。 だがそこにはバイブやローターといった所謂大人の玩具と、数本のミネラルウオーターしか入っておらず、本当にこの状況を打破出来るような物は何も入っていなかった。 牧野も引き出しを調べた時に同じように落胆したのだろう、だからあえて広瀬にチェストの中身を言わなかったのだ。 「は、…はあ?嘘だろ…?なんなんだよこれ、何かのドッキリなんだよな…?」 あまりにも異常な状況に頭が混乱する。 広瀬は耐えられなくなって、衝動のままチェストを蹴り倒した。 無情にも引き出しの中身が散らばる。 「ひ、広瀬君!やめて怪我しちゃうよっ!」 「うるせぇっ!」 止めようと広瀬の腕を掴む牧野。 すると興奮で前が見えなくなった広瀬の、振り払おうとした手が牧野の頬にぶつかった。

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