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「はーあはは、マジでイったのかよ。どんだけ淫乱なんだよ」 広瀬は笑みを浮かべながら、牧野のズボンを脱がした。 現れた紺色のボクサーパンツは、中心が深い色に濡れていて、牧野が射精していることを知らしめていた。 そのままボクサーパンツも取り払うと、精液やら先走りやらでぐしょぐしょに濡れた牧野自身がまだ硬さを残したままひくひくと震えていた。 「なんだよ、まだ勃ったままじゃん」 広瀬はその卑猥な光景に頭の中が茹りそうになる程の興奮を覚えていた。 むわっと濃い精液の臭いに混じる牧野の体臭が、下半身を重くする。 男なんかに興味なんてなかったのに、麻薬のような牧野の痴態は広瀬を痺れさせた。 「はは、よかったな牧野、俺お前とヤれそうだわ」 そう軽口を投げ掛ける広瀬に、牧野は荒く息を繰り返すだけで返事をしない。 過ぎる快感に気でも失ったかと広瀬は牧野の顔を覗き込む。 「おい、聞いてんのかよ…、ーーっ!?」 牧野の表情を見て、広瀬は言葉を失った。 「…っ、ひ、ぅ…ぅぅっ」 牧野は両目からぼろぼろと大粒の涙を溢れさせていた。 長い睫毛が涙に濡れ、頬までびしょびしょにして小さく震える牧野は、広瀬の顔を見て更にしゃくり上げて泣き始めた。 そんな牧野を見て、広瀬は呆然とした。 「…な、…っは?」 どうして牧野が泣くのか広瀬は理解出来なかった。 確かに無理矢理、縛ったり玩具で虐めたりした。 だけどそれは全部牧野が望んだことじゃなかったのか? 自分と性行為がしたかったんだろ? 実際、牧野はあんなに感じ入っていたじゃないか。 良さそうに、腰を揺らしてたじゃないか。 だけどだけど、それがもし本当に薬のせいだとして、牧野の本心ではなかったとしたら? 何のやましさもなく、純粋な理由で水を飲んだだけだとしたら? 広瀬はその時やっと、自分のしたことの下劣さに気付き、そんな牧野を見て欲情していた自分自身に血の気が引いた。

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