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「ま、牧野…」
広瀬は吸い寄せられるように、牧野へと身体を寄せた。
囁くように名前を呼び、こちらを見ないようにと目をぎゅっと閉じている牧野へと顔を近付ける。
そして頬に手を当ててこちらを向かせると、そのまま触れるだけのキスをした。
少々かさついた唇の、柔らかな感触が広瀬の頭を痺れさせる。
薄く目を開くと、驚きに開かれた牧野の瞳と間近で視線が交差する。
「っ…?」
思ってもみなかった広瀬の行動に牧野は混乱を隠しきれないようで、何度か瞬きを繰り返しポカンと口を開いた。
「…っふ、…ぁっ」
だが広瀬がもう一度唇をくっつけ、ぺろりと乾いた牧野の唇を濡らすように舐めると、牧野は少し吐息を漏らし、そしてハッとした。
「や、やだっ…」
かああと頬を染め、広瀬のキスを拒むように顔を背ける。
だがそれも広瀬に両手で包むようにして顔の向きを戻されてしまい、拘束されているのもあって抵抗のしようがなく、なすがままに口づけを許してしまう。
広瀬は角度を変えて何度も牧野にキスをした。
はむ、と牧野の唇を啄むようにしたり、ちゅうと軽く吸い付いたりして、今までの言動が嘘のように優しいキスを繰り返す。
薬のせいで敏感になっている牧野は熱がぶり返したように身体の芯がじんじんして、段々と身体に力が入らなくなってきた。
そして薄く、牧野の口が開かれたところで少し強引に広瀬の舌が侵入してきた。
「んん…っ!ふ、…ふぁ、」
小さく開いた口に捩じ込むようにし、引っ込んで逃げる牧野の舌を捕まえる。
躊躇する薄い舌に自らのを絡め、ぬるぬると擦り合わせた。
牧野はくぐもった声を上げながらビクビクと身体を震わせている。
こちらを見る飴色の瞳が溶けだしてしまいそうな程潤んでいるのを見て、広瀬の頭も融けてしまいそうだった。
お互いに気持ちよくてキスに夢中になる。
拒んでいた筈の牧野も徐々に頭の中がとろとろになって、いつの間にか広瀬の舌に応えていた。
交差する視線から、混じり合う唾液から、じりじりと牧野の熱が移って、広瀬の身体を熱くしていった。
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