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「はぁーーーー……全く、可愛すぎかな?」
一面に設置された数台のモニターを眺めながら、男は深く深く溜息をついた。
自らのデスクに肘をつき、組んだ両手に顎を乗せる。
男の顔に掛けられた眼鏡が照明の光を反射させキラリと輝く。
「お疲れ様です局長」
そこへ局長と呼ばれた男の、隣のデスクに腰掛けている男がキャスター付きの椅子を器用に足で動かしながら近付いて来た。
「いやー、ほんと一時はどうなるかと思いましたね」
「ふっ…君には少し手強く感じたかもしれないな新人君」
「そーですよー。ほんともう冷や冷やして肝が冷えました」
新人と呼ばれた男はやれやれと言わんばかりに両手を上げると、やっぱり局長の言う通りでしたねと続けた。
「あの二人がまさか相思相愛だったなんていつからわかってたんですか?」
「ふっふっふっ…それはもうこの二人に関する資料が送られてきた時からビビッときていたさ!」
得意気にデスクの上にあるタブレットを見せる局長。
そこには広瀬と牧野に関する情報が、二人の顔写真付きで事細かに記されていた。
「というかだね、基本幼馴染の関係で片方は活発もう片方は控えめなんてものはだね、もう将来付き合うことは目に見えているんだよ、一番カップリングが成立し易い設定なんだ!」
「えー…でも、広瀬君は途中から牧野君のことイジメてたんですよね?それってどうなんですか?」
「ズバリ思春期特有の好きな子程イジメたくなる症候群だよ。きっかけはどうであれ、彼は自分でも気が付かない内にその病を患っていたのさ。その証拠に牧野君が遠くに行ってしまったことに対して苛立ちを抱いていただろう?」
あーそういえばそんなことも書いてありましたねと新人は納得する。
「それに何より!何故だか女の子と付き合っても長続きしない、っていう男は大体ホモだから!」
「いやーそれは流石に局長の妄想入ってますねー」
ツッコミを入れる新人、だが局長は聞いていないようでひたすらあーだこーだと解説している。
ああこうなったらしばらくは局長の妄想語りは止まらないなと新人は諦め、ちらりと一際大きなメインモニターに視線をやった。
「まあ…カップルになる可能性を持っているからこそ、あの部屋に閉じ込められたんですけどね」
モニターに映る、今も愛し合っている二人を見て、新人は独り言のように呟いた。
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