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「それでは諸君、任務開始だ」 局長の言葉と共にモニターの映像が切り替わり、それを合図に三人はそれぞれの持ち場に着く。 モニターが映し出したのはどこかの部屋の中で、全体的にピンクのその部屋には、中心にこれまたピンクの大きなキングサイズのベッドが設置されていて、その上に二人の男が眠っていた。 今回選ばれたターゲットの犬飼と猫宮だ。 「ふっふっふっ、やはりあの部屋はこういう一見してラブホみたいなゴテゴテな内装がいいな。実に合っている」 「局長、会議で熱弁してましたもんね。この方が中にいる人間の不安を煽って、吊り橋効果的な作用が働いてより二人の中が親密になり易いとかなんとかって…。よかったですね意見が通って」 「ふふん、勝因はまさに私の粘り強さだな」 「諦めが悪いとも言いますけどね~」 「マミちゃん辛辣!」 雑談を交わしながらモニターの様子を観察する三人。 モニターの中の二人は気持ち良さそうにすやすやと寝息を立てている。 「というか、よく眠ってますね二人共。そろそろ目覚めてもいい頃なのに」 新人の言葉に局長も同じことを思っていたのか、ふむ、と顎に手を当てている。 「恐らく投与した睡眠薬の量が少し多かったのだろう。全く、捕獲班の奴等は適当な仕事しかしないな。マミちゃん苦情リストに捕獲班の名前も追加しといて」 「は~い」 「それと新人君、部屋に覚醒薬を十パーセント投与」 「了解しました」 カタカタと新人がコントロールパネルを動かすと、シューと音を立てて霧状の薬が部屋に投与される。 暫くして、眠っていた二人が身動ぎ始めた。 最初に目を覚ましたのは犬飼の方で、身体を起こすとキョロキョロと周りを見渡している。 その顔には困惑の色が見られ、瞬きを繰り返したり、ゴシゴシと目を擦っていた。 先程まで自室で眠っていたのに、目が覚めると別の部屋なのだから当たり前の反応だろう。 「いやー混乱しているね。さあ、早く隣で眠っている人物に気付くといい」 局長がそう呟くと共に、犬飼は猫宮の存在に気付き、驚きに身体全体を跳ねさせていた。 そうして狼狽え混乱しながら暫く考えた後、猫宮を起こすべく恐る恐る手を伸ばしたのだった。 「ふふふ、それでは見せてもらおうか、君達の馴れ初めを」 うっすらと笑みを浮かべながら、局長は手元のスピーカーのスイッチをオンにした。

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