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06
それから混乱している猫宮に犬飼が知りうる範囲での事情を話した。
「そっか…じゃあ犬飼君も起きたらここにいて、よくわかんないんだね」
「はい…」
大きすぎるベッドに二人して腰掛け、お互いの眠る前の状況を確認し合う。
だが二人ともこんな状況に陥った理由に心当たりなどなく、二人揃って頭を悩ませた。
見た所、現在二人がいるこの部屋には扉や窓はなく、天上に小さな換気口があるが、それも大きさ的に外に出ることは不可能だろう。
実質閉じ込められているこの絶望的な状況の中で、犬飼と言えば隣にいる猫宮をチラチラと横目で盗み見してはドキドキと胸を高鳴らせていた。
どうしようと腕を組み不安そうな表情を浮かべる猫宮に、その距離の近さに顔が真っ赤になる。
それ程までに犬飼にとって猫宮は憧れの存在で、想い慕う存在で。
こんな可笑しな空間の中にいるというのに、猫宮と二人っきりになれて嬉しいとさえ思ってしまうのだった。
「犬飼君…?」
「はっ、え、な、なんですか…っ?」
猫宮に見惚れていると突然その綺麗な顔がこちらを振り向いて、犬飼は不自然にも大きな声を上げてしまった。
驚いて目を丸くする猫宮に、犬飼は恥ずかしさが込み上げ顔を伏せる。
そんな犬飼に猫宮はふっと笑みを溢す。
「先輩…?」
「ふふ、ごめんね。急に無口になったから体調でも悪いのかと心配してたんだけど…大丈夫そうでよかった」
そう言って花が綻ぶように微笑む猫宮に、自分を気遣ってくれたその優しさに、犬飼は好きです!と心の中で叫んだ。
「…ほんとに、犬飼君が一緒で良かった。俺一人だったら怖くて怖くてしょうがなかっただろうから」
「…っオレも、先輩と一緒で良かったです!」
必死にそう伝える犬飼に猫宮はそっかとまた笑みを溢した。
だが次の瞬間には笑みが隠れ、猫宮の表情が曇ってしまった。
どうしたのかと犬飼が問い掛けると、猫宮は首を振ってなんでもないよと答えた。
「よし、ここでじっとしてても何だし、何か脱出する手掛かりになるような物がないか探してみよっか」
「?…はい」
先程の表情を誤魔化すように明るく振る舞う猫宮に、犬飼は少しの疑問を抱えたが、それ以上詮索することはしなかった。
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