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言ってしまった。
猫宮を後ろから抱き締めながら犬飼は硬直した。
その頭からは今にも湯気が立ち上がりそうだった。
とうとう言ってしまったのだ。
秘めていた気持ちを、猫宮に。
溢れ出したものが止められずに、ほとんど勢いだけで伝えてしまったが、後悔はしていないつもりだ。
「……」
沈黙が痛い。
猫宮の反応が気になるが、告白したというのに勇気が出せず顔を見る事が出来なかった。
猫宮の胸元に回した腕が震えてしまうのを我慢しながら返答を待つ。
「…い、犬飼君」
「は、はいっ!」
しばらくして囁くように呼ばれた自分の名前に、犬飼は反射的に返事をした。
「そろそろ離してくれないかな…」
何を言われるのだろうとドキドキしていたが一瞬で肝が冷える。
「っ、す、すいません!」
パッと腕を離しそのまま反省するかのように正座をする。
太腿の上に強く握った拳を押し付けた。
「…い、嫌でしたよね…ほんとにすいません…」
情けなさとショックで押し潰されそうになって、犬飼は泣きそうになる。
ああこんな結果になるのだったら言わなければよかった。
「え…あ、違うよ!嫌とかじゃなくって、離してもらえないとちゃんと向き合って話、出来ないから…」
目に見えて落ち込む犬飼に慌てて先程の言葉の意味を訂正する猫宮。
それに犬飼はえ?と顔を上げた。
すると目に入った猫宮の顔が林檎のように耳まで赤くなっていることに気が付く。
「だ、だって…いきなり好きとか言われるなんて思ってもみなかったから…っ俺、好きになってもらえるような人間じゃないし」
「ちがっ!猫宮先輩は優しいし綺麗だしいい匂いがするし可愛いし笑顔が素敵だし、それにえっとえっと、俺は猫宮先輩の全部が大好きなんです!」
つい熱くなって早口に猫宮の魅力を語ってしまった犬飼。
ハッとして正気に戻った頃には、猫宮は犬飼と同じ様に正座をしており顔を手で覆ってプルプルと震えていた。
恐らくここまで好意を剥き出しにされたことがないのだろう、犬飼の真正面からの告白に耐えられなくなってしまったらしい。
「…あ、」
かくいう犬飼も己の大胆な行動を思い返しボッと顔を赤く染めた。
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