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「違っ…」 だが口を開くと変な声が出そうになり、慌てて手の甲を口に当てる。 ふうふうと勝手に息が上がって身体中が熱かった。 「犬飼君…?」 心配そうにこちらを見やる猫宮。 そのパジャマからほんの少しだけ覗く首筋にゴキュリと喉が鳴り、下半身に熱が集中した。 「っっ…」 自分の身体の変化を猫宮に気付かれたくなくて背中を丸めるとそれを苦しいのと勘違いしたのか、猫宮が犬飼の頬に手を添えた。 冷たい掌の感触にビクッと大袈裟に身体が揺れ、目をぎゅっと閉じる。 「わ、凄い熱い!大丈夫犬飼君?もしかしてずっと体調悪かった…?」 猫宮の問い掛けに答えられる訳もなく、弱々しく首を横に振る。 犬飼自身、突如自分の身体を襲う激しい熱に検討などつく筈もなく。 ただ、先程浴びた煙りのような物が原因なのは明らかだ。 それを伝えたかったが、口を開いて情けない声を聞かれるのも嫌だった。 というか今すぐ一人になりたい。 このままの状態で猫宮と一緒にいるのは非常にマズイ。 「犬飼君、顔上げれる?」 だらだらと冷や汗を流しながらどうにかして一人になれないかと無謀な考えに頭を回転させていると、猫宮からそう言葉を掛けられた。 促されるままおずおずと顔を上げると、恐ろしい程近くに猫宮の顔があり、同時に額と額を密着させられて、あまりのことに理解が追い付かず犬飼は石のように固くなった。 「うーん、やっぱり熱あるのかも」 所謂おでここっつん状態を何の抵抗もなく行う猫宮。 これは親子またはカップルがすることでは?ということをしれっとやるので恐ろしい。 思考停止した犬飼はただただ目をひん剥き目の前の想い人の唇をガン見していた。 薄っすらと桜色の形の良い唇が言葉を発する度に開いたり閉じたりしている様がとてつもなく色っぽくて、そこから覗く白い歯にゾクリとする。 紅い舌が見え隠れする様子のなんと甘美なことか。 そして生暖かい吐息が自身の唇に触れ、そのくすぐったさに頭の中の理性という名の糸が音を立ててブチ切れた。 「犬飼く、んむっ?!!」 犬飼は堪らなくなって、猫宮を押し倒す勢いで唇を塞いだ。 突然のことに避けようがなく、猫宮はされるがままになり、ただ驚きに目を見開いている。 倒れ込むようにそのまま二人で床に崩れ落ちた。

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