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目を覚ますとそこは白い部屋だった。 窓の一つもないその部屋は全体が白い壁で囲まれていて、見渡す限り床も天井も白一色だった。 蛍光灯に照らされた室内が起き抜けの目には眩しくて、勝手に目が細まる。 「……なんだここ、」 これまた白い大きなベッドに預けていた身体を起こし、塩谷はしぱしぱと瞬きを繰り返した。 ボヤける視界にいつも身に付けている眼鏡がないことに気付いた。 ど近眼の塩谷にとって眼鏡がないと周囲の様子も確認することが出来ない。 やばい、と冷や汗がこめかみを伝う。 取り敢えず手の届く範囲で眼鏡がないか探る。 すると手が何か柔らかいものに触れた。 「…っひ、!?」 自分のすぐ隣、数センチの距離もない箇所に何かある、いやいる。 暖かくて程よく弾力があって…この感触は人だ。 「…塩谷、さん…?」 自分以外に人がいたことを認識したのと同じタイミングで名前を呼ばれ、塩谷は飛び上がった。 ひょえええ…ッと情けのない声が上がる。 眼鏡がないので相手の顔もよく見えず、大体のシルエットだけがぼんやりと把握出来る状態だった。 だけど自分の名前を知っているということは知り合いの誰かなのだろう。 一体誰なのか、会社の人間かはたまた身内かそれとも…。 まあ誰だとしても、恐ろしいのは同じなのだが。 「あの…大丈夫ですか?」 ビビってベッドの端まで後ずさっている塩谷に、正体のわからない人物は心配げに尋ねた。 その聞き覚えのある声に、塩谷は動きを止めた。 「え、…え?」 塩谷の記憶が正しければその声の主、男にしては少し高めの、だけど聞いていて居心地が悪いものではなく、逆にずっと聞いていたいぐらいの安心出来る声。 そんな人物を塩谷は一人しか知らなくて、期待にドクドクと心臓が忙しなくなる。 そんな、…まさか本当に? 塩谷は歓喜にも似た気持ちで目の前の人物に問い掛けた。 「佐藤…さん?」

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