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佐藤は同じ会社の同僚であった。
別の部署で働くフロアも違う為、顔を合わせることは滅多にないのだが、塩谷は佐藤のことをよく知っていた。
塩谷よりも二つ年下で、くりくりとした丸い目が特徴的な幼い顔立ち。
誰に対しても明るく謙虚な性格から社内でも男女問わず評判が良く、悪い噂は聞かない。
地方出身の一人暮らしで、趣味はランニングと変わった動物のフィギュアを集めること。
苦手なものはトマトと心霊的なもの、好きなものは丼物の食べ物と動物全般。
お酒はあまり飲めなくて、映画を見て本気で泣いてしまうことがある…などなど、佐藤に関するありとあらゆる事柄をとても詳細に塩谷は知り得ていた。
何故なら塩谷は佐藤のストーカーだからだ。
「やっぱり塩谷さんですよね。いつもの眼鏡してないからちょっと不安になっちゃいました」
顔見知りとわかって佐藤はほっと息をつく。
塩谷にはよく見えていないが、その表情は安堵の笑みを浮かべていた。
「…っ、っつ」
佐藤を目の前にして塩谷は喜びに打ち震えていた。
職場で出会った日から一方的に気持ちを寄せるようになって早一年。
想いを告げる勇気もなく、ただただ気持ちばかりが募る毎日。
ついつい後を付けて自宅を調べたり、盗撮したり、盗聴器を仕掛けたり…。
全ては佐藤のことを知りたい一心での行動だった。
だけどもそれだけでは満足出来ず、日を追うごとにもどかしくてもどかしくて頭が心がどうにかなってしまいそうだった。
ああ、もし佐藤を独り占めにすることが出来たら…この際誰にも知られないように捕まえて監禁してしまおうか…そうすれば俺だけのものになるのに…。
などと思考が危ない考えにまで陥った時、偶然にも見つけたのだ。
普段は何も気にはしない新聞の広告欄のある一つの広告に。
『恋に恋するそこの貴方、憧れのあの人に中々気持ちを打ち明けられず悩んでいませんか?その恋お手伝いします。まずはお気軽にご相談下さい』
これだと思った。
明らかに怪しい広告だったが、不思議とその時は信用出来る気がしたのだ。
だからもう、藁にでも縋る思いでそこに記された番号に電話を掛けた。
その結果、こうして佐藤と二人きりになれたのである。
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