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「…なんか、この眼鏡君めちゃくちゃメンタル弱くないですか?」 塩谷と佐藤が起きてしばらく、二人の様子をモニターで観察していた新人がそう口にした。 「ま~見た感じザ根暗ですもんねー。こりゃ結構イジられたりして人間関係に相当なトラウマ持ってますよ」 「うん、マミちゃんの言う通り。塩谷君は幼少時代から両親の過度な期待を背負わされ、その重圧から他者とのコミュニケーションもままならず、学生時代には酷いイジメを受けている。そして社会に出ても人との距離感が分からず、なじられ蔑まれる毎日。友人と呼べる存在もいない彼は人生に絶望しきっていた。そこに佐藤君という光が現れたわけだよ!佐藤君だけは彼を他の人と同じように見ていたんだね。それが彼にはすごくもう、それこそ感激で涙を流すぐらいには嬉しかったんだよね、そりゃなるよねストーカーになっちゃうよね」 局長の怒涛の解説にマミだけが納得してあーうんうんなっちゃいますねーと頷いている。 新人はえええ…と困惑気味だ。 「いやいやなんでそこでストーカーになるんですか、普通に仲良くなったらいいんじゃないですか?」 「君は本当に意外と鬼畜だな新人君。対人スキル皆無な塩谷君にそんな高等テクニックが出来る訳ないだろう!コソコソと後を付けては盗聴したり盗撮したり佐藤君が暮らすマンションのドアに差し入れ掛けたり、そんなひっそり気持ちを想い募らせることしか出来ないんだ!」 「いや最後のは全然ひっそりじゃない!主張強めですよねてか怖いな!」 新人の必死のツッコミもなんのその、局長は目元を手で覆った。 「う…っ、なんだか一生懸命な塩谷君がとっても尊く思えてきて涙が…。そんな風にストーカー行為を行いながらも決して佐藤君に見返りを求めたりはせず、ほんの少しでいいから仲良くなりたい、言葉を交わしたいというそんなささやかな願いから勇気を振り絞って我々に依頼をしてきた塩谷君が尊い…。あ、因みにここで言う見返りは性的なものでは一切ないからね、なんていうか仲良くなりたい的な?」 局長の語りが始まってまたか…と半分聞き流していた新人だったが、局長の言葉に引っかかった。 それはマミも同じだったようで新人が言うよりも先に局長に質問していた。

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