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「な、なんだ…っ?」 耳鳴りのような甲高い音に、塩谷は手で耳を塞ぎ顔を顰めた。 「さ、佐藤さん!」 だが同じように耳を塞いでいる佐藤を視界に入れると咄嗟に自分の方に引き寄せた。 この異様過ぎる空間の中、次に何が起こるのかもわからない。 だから佐藤のことを守ろうとしたのだ。 腰を掴みぎゅっと抱き締める、そこに下賤な気持ちなど一切ない。 「………」 苦しいぐらい塩谷の胸に頭を押し付けられながら佐藤は顔を上げて塩谷を見た。 今の体勢だといつも長い前髪で隠されている塩谷の顔がよく見え、その真剣な表情に、汗のつたうこめかみに、佐藤は頬を染めた。 しばらくしてピタリと音が鳴り止むと、部屋の中に再び静寂が訪れた。 さっきのは一体なんだったのか、塩谷はまだ警戒して辺りをキャロキョロと見回す。 「し、塩谷さん…、」 するとか細い声が聞こえて、自ずと視線を下に移す。 そこには塩谷に抱き込まれた佐藤が頬をぺちゃんこにしながら苦しげに呻いていた。 塩谷の喉からヒュッと呼吸が漏れた。 「おおおおお!す、すすっすいませッ!!」 急いで佐藤を引き離し、思いきり頭を下げる。 焦っていたとはいえ俺はなんてずうずうしことを…と塩谷が卑屈になっている間、佐藤は目を伏せ熱の持った頬に手を添えていた。 「だ、大丈夫です…それに、俺のこと守ってくれたんですよね…ありがとうございます」 「佐藤さん…っ」 佐藤の言葉に嬉々として顔を上げる塩谷、だが佐藤越しに部屋の壁を見て動きを止めた。 「塩谷さん?」 その様子に気付いた佐藤も、塩谷の目線を追うように背後の壁を見た。 「え…?」 そこにはこの部屋の白い壁に、まるでプロジェクターで映し出したかのような赤い蛍光色の文字が浮き上がっていた。 【ようこそ】 二人がその言葉を認識した途端、パッと文字が消え失せた。 そして瞬時に壁に新しい文字が映し出される。 【あなたたち二人は選ばれました。この部屋からの脱出はミッションをクリアすると可能になります】 二人がその意味を理解した瞬間、またもや文字が消えた。

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