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「なんだ、これ…」
「………」
突然の不可思議な現象に二人は唖然とした。
あまりにも非日常的な状況に頭が追いつかない。
だが二人が狼狽えている間にも壁には新しい文字が次々と浮かび上がった。
【お互いの服のタグを確認して下さい】
今度はこちらに指示を仰ぐ内容で、二人がそうするのを待っているように文字は消えず残ったままである。
塩谷は少し迷ったが勇気を出して恐る恐る己の服を確認した。
服を引張り首の後ろのタグを見ると、そこには凸と表記されていた。
今着ている服は、普段から塩谷が部屋着として長年愛用しているものだ、だがこのタグには全く見覚えがない。
「…おつ…?」
首を傾げながら読み上げる。
おつ、またはでこぼこのでこ。
服のタグなど特に気にもしない塩谷だったが、いつも同じ店でしか衣服を購入しないのでこんな独特のブランド名の服を持っている筈がない。
己の記憶違いかはたまた、もう一つ考えられるのは自分が眠っている間にタグだけ付け替えられた可能性。
だけどもそんなことをしてなんの意味があるのだろうか。
「あの…佐藤さんは何か書いてありましたか?」
気になって佐藤に声を掛けた。
佐藤も丁度自身の服のタグ を確認し終えたところのようだった。
「えっと…こんな感じです」
くるりと背を向けて躊躇なく襟首をぐいっと下げる佐藤。
それに驚いて塩谷は咄嗟に顔を背けた。
だがそこで顔を背ける方がおかしな反応だろとハッとし、これはやましくないと言い聞かせながら顔を戻した。
「…っ」
途端に佐藤の頸が目に入りドキリとする。
健康的で魅惑的な、塩谷よりも幾分か細い綺麗な頸。
そこだけを見つめていたい衝動をどうにか抑え、タグにだけ視線を合わせる。
「…おう…?」
佐藤の服のタグには凹と表記されていた。
「俺、服のタグとか皮膚に擦れて痛くなるんで取っちゃうんです…でもこの服には付いてるし…だから寝てる時に取り付けられたのかなって…」
知ってます、とは言わず、塩谷はうんうんと佐藤の話に頷く。
では、この凸と凹は何の為に二人の服にそれぞれ取り付けられたのだろうか。
「塩谷さんの方は何が書いてありましたか?」
「えっと、…」
佐藤に自分のタグを見せようと背を見せ襟元に手を掛けた塩谷、だがその動きが不自然に止まった。
「塩谷さん?」
不思議に思った佐藤も塩谷と同じ方向を見た。
「え…?」
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