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「(俺が、佐藤さんを拘束…?)」 塩谷は手に持った拘束具を見て、次に佐藤を見た。 佐藤はその大きな瞳をウルウルさせながら小動物のように震えている。 「ム、ムリです…!」 そんな佐藤の様子にもはや反射的に塩谷は即答していた。 「どうしてですか…っ?」 「う…」 ショックを受けたような表情をする佐藤に塩谷の胸が痛む。 だが塩谷にとって佐藤は何よりも大切な人で、何よりも尊ぶべき存在。 そんな佐藤に酷いことなど出来ないし、してはいけないのだ。 出来ることならば、誰にも何にも傷付かず、いつも笑顔で幸せに満ち溢れていて欲しい。 その為にストーカーしてると言っても過言ではない。 何時もどんな時も、片時も離れず側で見守り、佐藤のことを一番に想っているのだ。 「…っ、こんな、人に手錠をかけるとか…出来ませんっ…い、痛いかもですし、それに怪我するかも…!」 そんな本心はひた隠しにして、塩谷は当たり障りのない言い訳を口にする。 だが塩谷のそんな想いもなんのその、佐藤も折れはしない。 「大丈夫です!!俺結構頑丈ですし、手錠もこんなにふわふわですし!」 「で、でも、」 「塩谷さん!!」 尚も拒否しようとする塩谷の腕を佐藤は掴んだ。 いきなりの佐藤からのボディタッチに塩谷は硬直する。 「…このまま何もしなくて、死んじゃったらどうするんですか!そっちの方が痛いのよりよっぽど嫌ですよ…」 感情がピークを迎え、佐藤の目からどばっと涙が溢れた。 塩谷は驚いて、泣かせてしまったと血の気が引く。 「!さ、佐藤さ…っ、」 「それに…も、もし、死んじゃったら…塩谷さんとももっと話せないし…、仲良くなれないじゃないですかぁ…いやですそんなの…っ」 「え…」 佐藤の言葉に、塩谷は耳を疑った。 仲良くなれないじゃないですかというフレーズが頭の中で繰り返される。 幻聴じゃない、確かに佐藤はそう言った。 「ーーーーっ」 それを理解して、塩谷は喜びに打ち震えた。 全身に鳥肌が立ち、腰が抜けそうになる。 「(佐藤さんが…俺と仲良くなりたい…?え、なんだこれ、こんなことあっていいのか?)」 あまりの都合の良さに全部己の妄想なのかと疑ってしまう。 だけどもこれは現実で、塩谷はあまりの嬉しさにぽやぽやと夢見心地になった。 「お、お願いします…俺を拘束して下さい…っ」 だから再度佐藤にそうお願いされ、今度は拒否することが出来なかった。

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