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ベッドに腰掛けた佐藤の、背後で揃えられた両手首に手錠をかける。
手錠はフワフワの毛に覆われていて一見すると柔らかそうだが、触れると意外に頑丈な作りをしているのがわかる。
ガッチリとそれが佐藤の腕を拘束する様に塩谷は顔を顰めた。
「…っい…、痛くないですか…?」
吐き出した言葉は今にも消え入りそうで、目隠しを持つ手はぶるぶると震えていた。
こんなこと塩谷は本当にしたくなかった。
こんな、まるで今から佐藤に乱暴するみたいなこと、とそこまで考えて吐き気がしてきた。
「(俺が安易にあんな広告に申し込んだからこんなことに…佐藤さんを無意味に怖がらせて、あまつさえこんな酷いことをして…っ最悪だ)」
全部自分のせいだと罪悪感に押し潰されてしまいそうで、過呼吸寸前のように上手く呼吸が出来ない。
「塩谷さん」
そんな塩谷の思考を中断させるように、佐藤が声をかけた。
立っている塩谷を見上げる形で佐藤はじっと塩谷を見つめていた。
こんな酷いことして塩谷さんなんか嫌いです、なんて言われたらどうしようと勝手に想像して塩谷は青褪めた。
だが塩谷の想像とは違い、佐藤は口元を綻ばせ微笑んだ。
「大丈夫です、これは俺が頼んだことですから塩谷さんが気に病むことないですからね」
まるで見透かされているような佐藤の言葉に塩谷は目を見張った。
きっと塩谷が酷い顔をしているので掛けた言葉なのだろうが、まるで以心伝心のように思えて塩谷はときめいた。
「それに、塩谷さんが酷いことしないってわかってますから」
だが佐藤のその言葉に、また胸が痛んだ。
「…出来ました…」
躊躇しながらも佐藤に手錠と目隠しを施し終えた頃、塩谷はすっかり疲労していた。
すっかり背徳的な姿になってしまった佐藤に塩谷はゴクリと唾を飲み込むと、ハッとして首を振り意識を他へ移そうと壁の文字を確認する。
どうやって確認しているのか塩谷には疑問に思うところだったが、ミッションをクリアしたと判定されたようで壁の文字はスーッと消えていった。
「よかった…(これで出られる)」
少し惜しいと思う気持ちも正直あったのだが、これ以上佐藤を傷付けるようなことはしたくなかったので、これでいいのだと自分に言い聞かせた。
安堵して、佐藤にも報告しようと口を開いた。
が、その時再び壁に浮かび上がった文字を見て唖然とした。
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