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「なっ…、は?」 それは新たなミッションを告げるもので、まだあったのかと思うのと同時に、浮き上がった内容に塩谷は頭を強く殴られたかのような衝撃を受けた。 【MISSION:対象者凸は対象者凹の胸を愛撫して下さい】 見間違いじゃないかと短い文章を何度も目で往復する。 だがその内容が変わることはなく、代わりに短い電子音と共に【10:00】と意味深な数字が表示された。 その数字が示す意味を塩谷は直感で理解した。 恐らくこれはカウントダウンなのだろう。 このカウントが0になるまでの間、塩谷に佐藤の身体を弄れという意味なのだ。 10秒なのか10分なのか、恐らく後者であろうが、塩谷は前者であることを願わずにはいられなかった。 「塩谷さん…あの、どうなりましたか?」 どうするどうすると考え込んでいたところ、こちらに問いかける佐藤の声が不意打ち過ぎて、塩谷はうへぁあはい!っと素っ頓狂な声を上げた。 変な汗が背中を伝う。 「しゃ、佐藤さん…えっと、」 目隠しをされ手錠をかけられ、そんな状況で唯一一緒にいる塩谷まで黙っては不安に決まっている。 早く状況を説明してあげなければ、と思うが言葉が出なかった。 このまま本当のことを伝えた方がいいのだろうか、塩谷は迷った。 「(…だってこんな悪趣味なこと、もし俺が佐藤さんに触れたいが為に嘘をついていると思われたら…終わる、確実に何もかも)」 佐藤に嫌われ冷たい視線を向けられる想像をして塩谷は青ざめた。 小さく身体が震える。 佐藤にまで嫌われては塩谷は生きていけない。 恋だの愛だの、そんなのどうでもいい。 ただ佐藤にだけは今まで通り笑いかけて欲しいだけだ。 それなのに…ああ、俺がそれ以上を求めてしまったから。 「塩谷さん…?」 何も悪くない佐藤が今、何処かもわからない部屋に閉じ込められ、縛られ視界の自由を奪われて。 大して親しくもない人間に頼らざる得ない状況に追いやられたのも何もかも全部、自分のせいだと塩谷は思い込む。 目隠し越しにこちらを伺い見ようとする佐藤の不安げな姿に、罪悪感がひしひしと突き刺さった。 嘘をつくのなんて、無理だと思った。 「さ、佐藤さんっ…!」 ベッドに腰掛ける佐藤と目線を合わせるようにその場に膝をつく。 「えっと…さっきのミッションは無事クリアしたんですが、実はまだミッションがあってその内容が…っ信じて貰えないと思うんですけど、お、俺が佐藤さんの……あの、その…、む、むむ胸をマッサージしないといけない、みたいで…っ」 愛撫するとはとても言えなかったが、嘘は言っていない。 「す、すいません…っ」 どんな反応をして、どんな言葉が返ってくるのだろうか。 真っ直ぐ佐藤の方を見れず、顔を俯かせ両膝に爪を立てた。

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