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「ふっふっふっ…さすがリニューアルしただけある、我ながら最先端かつ斬新なアイデアだ!これこそが『部屋』の真骨頂!素ん晴らしいと思わないかい二人とも!」 「いやー本当に経理の人がよく許可したなーって思いますねー」 「こんなに経費を使って…あとで後悔しても知らないですよ…」 モニターを見ながらターゲットの二人を観察する三人。 眼鏡をキラリと輝かせながらそう豪語する局長に、マミと新人はそれぞれ思ったことを口にした。 「後悔?ふふん、ちみは何を言っているのだね新人君。この『部屋』の働きであの二人は順調に親密になっていってるじゃないか!恋い焦がれた相手と二人っきり、非日常な状況に頼れるのはお互いだけ、秘めた想いを内に抱えながらも中々伝えられずもどかしい…ああいっそ衝動のまま流されてしまおうか…っそして日常では見られない想い人のあられもない姿に理性はもう!ショート寸前!くううぅぅっ!尊い!」 興奮に息荒く饒舌になる局長、新人はあ、この人なんにも考えてねぇと真顔になった。 「まあキラキラくんの方も満更でもなさそうですしねー。だって最初根暗くんに抱きしめられた時もあれ絶対ときめいてましたよね、目がハートでしたもん!」 最初とは一番初めに部屋に音が鳴り響いた時のことを言っているのだろう。 何が起こるかわからない状況で、突然の異変に塩谷が咄嗟に佐藤を守ろうとした時のことだ。 マミは可愛らしく手でハートマークを作ると局長に見せた。 「そう、そうなんだよマミちゃん!あの時の佐藤君のスッポリ収まり加減がなんとも萌えたね私は!体格差は素晴らしいよほんとご飯が何杯でも美味しく頂けちゃうからね!」 「根暗くんああ見えて意外とタッパありますもんねー猫背だけど!でもそれが逆にギャップ萌えってやつですよね!」 ねー!と顔を見合わせ共感する二人、ノリが女子である。 「はいはい、感想はそこまでにして後は仕事が終わってからにしましょうね。それより局長、次はどう動きますか?計測値ではターゲット二人共に興奮度が上昇していてて、そろそろ頃合いだと思いますが…」 もうすっかり慣れたように局長とマミを窘め、サブモニターで二人のコンディションを確認しながら新人がそう問いかけた。 「いや、まだだ。まだ二人の関係は確定しておらずあやふやの状態である。決定打となるものがまだこの二人には起こっていない。なのでまだまだじっくりと焦らしに焦らそうじゃないか」 「折角のヤンデレモードですしね!まだまだこれからですよー!」 ウキウキと楽しそうに企てる二人に、新人は激しくターゲットに同情した。 「それではちょっと、塩谷君には頑張ってもらおうじゃないか」 そう言ってコントロールパネルを操作し、局長はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

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