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鍵を使って拘束を解く。 手錠はふわふわの毛で覆われている物だったが、佐藤が暴れたこともあってか、手首には擦れて赤い跡がついていた。 鍵の在処は壁に浮かんだ文字に記されていた。 はじめから佐藤のズボンのポケットに入っているあたり、自分達をこの部屋に閉じ込めた人物の趣味の悪さが伺える。 塩谷は佐藤の涙でぐしゅぐしゅに濡れた目隠しを外した。 濡れそぼり潤んだ瞳が露わになって、塩谷は罪悪感に胸が押し潰されそうだった。 「佐藤さ…」 「…どうして…?」 塩谷の言葉を遮り、佐藤はベッドに横たわったまま掠れた声で呟いた。 その大きな瞳は塩谷を映すと、次から次へと涙を溢れさせている。 「どうして…なんで、こんな…っ」 説明もなしに訳もわからないまま身勝手に身体を弄られ汚されて、信頼していた人に裏切られて。 塩谷が思うより何倍も、佐藤はショックを受けたのだろう。 小さく悲しそうに震える佐藤に、己がとんでもないことをしてしまったと、塩谷は痛いぐらいに自覚していた。 わかっていた、佐藤にどんな目で見られるか。 ここまでのことをしたのだから当然だと自分に言い聞かせる。 だけど、だけどほんの少し、優しい佐藤なら許してくれるかもしれないとも思ってしまうのだ。 「…ッどうして、塩谷さん…っ」 だが塩谷のことを見やる佐藤に、その怯えを含ませた眼差しに、そんな希望も今や消え失せてしまった。 「……俺、なんです…」 塩谷はぽつりと語り出した。 真実を全て佐藤に伝えるべく、重い口を開く。 「す、すいません…っ俺が、佐藤さんともっと親密になりたくて、…この部屋に閉じ込めてもらえるように依頼したんです…」 塩谷は佐藤の目を直視出来なかった。 直視して佐藤の目に自分がどんな風に映っているのか知るのが怖かった。 俯きながら、淡々と真実を述べていく。 「…だけど、こんな…っ酷い内容のミッションがあるなんて知らなくって…お、俺はただ…ただ佐藤さんともっと仲良くなりたくって…でも、結果的に佐藤さんを怖がらて、傷つけて…。あんな、ことをしてしまって……ごめんなさい…ッ本当に、最悪です俺ッ…」 声を震わせ今にも泣き出してしまいそうになりながら、塩谷は必死で説明をする。 その間佐藤が口を挟むことはなかった。 「本当に、申し訳ないことをして…謝って済む問題じゃないですよね…で、でも俺、佐藤さんのことが…っ!」 一番伝えたかった言葉を口にしようとして塩谷は息を止めた。 顔を上げ佐藤の表情を目に入れた瞬間、ひゅ、と喉から変な呼吸音が鳴った。 佐藤は軽蔑の眼差しを塩谷に向けていた。 顔は青ざめ、信じられないものを見るような目で塩谷を見ている。 塩谷は首を絞められたように声が出なくなってしまった。 「…え……どう、いうことですか?…塩谷さんが依頼したって、…ッじゃあこれは全部塩谷さんが望んだことなんですか…っ?」 身体を起こし、怒りを露わにする佐藤。 キッと塩谷を睨みつける、だが途端にへにゃりと眉が下がった。 塩谷は違う!と声を上げたかったが、身体が硬直して取り繕うことが出来なかった。 「…っ可笑しかったですか…?怖がったり、泣いたりする俺は…貴方から見て面白い玩具、でしたか…ッ?」 そう言って、ポロっと涙が零れると、佐藤はゴシゴシと腕で涙を拭う。 「正直軽蔑、しました…。塩谷さんがそんな人だったなんて…信頼、してたのに…仲良くなりたいと思って、たのに…っだけど塩谷さんはそうじゃなかったんですね…ッだったら俺も、………貴方のことが嫌いです…」 はっきりとそう告げる佐藤の言葉は、鋭いナイフのように尖って塩谷の心臓を抉った。

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