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「……ふ、ッ」 最後まで出し切ると、塩谷は佐藤のナカからまだ固さの残る性器を引き抜いた。 ちゅぽんと穴の開いたそこから精液が溢れ出す。 「(……めちゃくちゃ気持ちよかった…)」 ふうふうと息を上げ、快感の余韻に浸る塩谷。 腰が蕩けてしまいそうな程の甘い気怠さ感じながら、組み敷いた佐藤の身体をぎゅっと抱き締めた。 「(…ずっと、こうしてたい……)」 腕に感じる佐藤の身体は熱を帯びていて、しっとりと汗ばむ素肌が触れ合う感触が心地良い。 時折ひくついては小さく喘ぐ声がなんとも可愛らしく、身体を繋げた今、想いが更に込み上げる。 「(佐藤さん…佐藤さん…っ)」 好きで、好きで、佐藤のことが大好きで。 遠く離れた所から見つめては、自分から話かける勇気もなく密かに想いを募らせ、夢を見て。 「(…佐藤さん…)」 ずっと触れたいと思っていたのだ、恋人のように。 優しい声で名前を呼び合って、隙間も出来ないぐらいに身体をくっつけて。 何度も何度もキスをして、微笑み合って。 ーーだけど現実は、甘い夢とは大違いだった。 「ひっ…ぐ…ぅ、ぅう〜…ッ」 塩谷の腕の中、佐藤は身体を震わせ泣いていた。 ボロボロと大きな瞳からは大粒の涙が溢れ、こぼれ落ちたそれがシーツにシミを作った。 可哀想に、佐藤の泣きじゃくる姿に塩谷はそう思った。 訳もわからず閉じ込められ、辱められ、無理矢理にも犯されて。 ただ塩谷の欲求を満たす為だけに、身勝手にも佐藤の心と身体は汚されてしまったのだ。 ほんの少し佐藤と親密になりたかっただけ、そんな淡い願いは結果として悲惨な結末を迎えてしまった。 「…さ、佐藤さん…」 恐る恐る塩谷が声をかけると、佐藤はひっと悲鳴を上げた。 「や…!…やだ…ッ…いやだっ!」 塩谷を拒否するように腕を振り身体を捻って暴れる。 そんな佐藤の行動に、佐藤が怪我をしてはいけないと塩谷は咄嗟にその腕を掴んだ。 塩谷に腕を掴まれたことで佐藤の抵抗がピタリと止まる。 「…んで…?」 弱々しい佐藤の声に、塩谷はハッとした。 「……なんで…、ですか…?塩谷さん…そんなに俺のこと、…っきらい、ですかっ…?」 眉を下げ両目に涙を溜めた佐藤は、その潤んだ瞳で塩谷を悲しげに見つめていた。 「こんな…、からだ…おかしいの…、違うのに…っぐす…ぅ…お、れ…おとこ、なのに…っ」 しくしくと泣き続ける佐藤に塩谷はさっと全身の血が引いた。 何か言わなければ、そう思うのに口が強張って何も言えなかった。 否定しなければいけないのに、嫌いな訳ない!と叫びたいのに。

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