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「…ッぅ、ぅぅううううーーっ!!」 次の瞬間、塩谷の涙腺が決壊した。 声を上げわんわんと泣き出した塩谷は、佐藤よりも激しく涙を飛び散らせ酷い有様だ。 これには佐藤も呆気にとられてしまう。 「ち、ちがッ…!き、き、嫌いとか…!そ、そ、そ、そ、そんな…ッぐ、ぅ…ぇ…ッ!」 喉か引き攣り、涙で目の前が水没して前が見えない。 だけどもちゃんと言わなければ、精一杯伝えなければ。 「お、おおお俺はぁ…!しゃ、しゃとうさんがぁ…ぁっう、ぇ…ッす、す、好きなんでふ!ぅ、ぐぁ…ひ、っぐ、」 顔中ぐじゅぐじゅにして告白する塩谷。 涙と鼻水と後よくわからない汁でごちゃごちゃの汚い顔で、廻らない頭で続ける。 「ずっと…!好きでぇ…ッ好きですきで好きすぎて!…だから、だからぁ…!あ、あ、愛してます…!」 叫んだその言葉が部屋に響いた。 塩谷は子供のようにおいおいと泣きながら、何度も言葉にならない言葉で愛してますと繰り返した。 そんな塩谷の告白を受け佐藤は、 「ーーーほんとに?」 そう問い返し、口の端をほんの少し上げた。 「ほ、ほんと、でしゅ…っぅ、ぐすっ、」 「…こんなことまでして、責任取ってくれますか?」 佐藤は両手を塩谷に伸ばすと、涙やら色んなもので濡れて張り付いている前髪を掻き分けた。 隠れていた塩谷の顔が露わになって、佐藤はほぅ、と息をつく。 「とります…!一生、責任取ります…ぅううううー…ッ!」 佐藤の言葉にただオウム返しに繰り返す塩谷。 眼鏡もなく、涙で更に視界が悪い中、塩谷には佐藤が今どんな顔をしているかなど、知る由もなかった。 「俺も愛してますよ、塩谷さん」

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