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しーんとまたもやその場が静まりかえる。 睨み合う局長と専務、その間にはバチバチと稲妻が走っているかのように見えた。 新人は局長がまた何を言い出すのかと気が気でなく、あの…と止めに入ろうとした。 この緊張感に勇気あるなアイツと他の社員達は固唾を飲んだ。 「っぬぁあ〜にがクレームだ!ぬぅぁあ〜にが費用だ!!我々は任務を遂行する為に常に『部屋』を最善の状態に保つ義務がある!仕事が回らない?費用がすごい?うるせー!!与えられた業務に対し全力で向き合わず、タラタラ文句を述べるだけの、その意識の低さがそれこそ職務怠慢ではないのか?!というか費用云々の問題をどうにかするのは上層部の、いや貴様の仕事だろうっ!!」 「ほぅ、」 鼻息荒くそう捲したてる局長にあ、終わった…クビだ…と新人は真っ白になった。 かたや局長に言い返された専務と言えば、口の端を上げ笑みを浮かべている。 その目は全く笑っていなかったが。 「最善の状態とは?意味もなく経費を浪費し、意味のない改良を加え、意味のない改装をすることを君は言っているのかな?」 「い、意味がないだと!全てに意味があるんだ!申請書にもいつも正当な理由を記載している筈だ!」 「その申請書だが、私が目を通した限りではそのような正当な理由は一切記載されていなかった。書かれていたのは愚かな理想を連ねた夢物語だけ…いやはやどうしてこんな物が通ったのか信じられないよ」 淡々と語る専務に局長は怒りを露わにする。 いつも申請書はマミが作成しているのだが、申請理由の項目は局長が指示を出している。 申請書の最終確認も局長が行なっているので、その申請書が否定されるということは、局長としての業務を否定されることと同じであった。 「なんだとっ!」 「それにその『部屋』についてだが、君達の部署はあまり結果を出していないようだね?膨大な経費をかけて月に何組のCPを生み出しているんだ?他部署と比較しても中々数字が上がっていないようだが」 専務の鋭い眼光が局長を射抜く。 思わぬところを指摘されそれまで強気だった局長の目が泳ぎ始める。 「っそ、それは1組1組丁寧に対応しているからで…っ」 「いいかい、過程がどうであれ大事なのは結果だ。結果を出せない部署には経費もこれ以上出せない。それに各部署の今後の士気にも関わる為、これ以上無理な注文や大幅な改装の申請を行わないように」 「んなっ!」 ガビーンッとショックを受ける局長。 専務から言い渡された命令に呆然と口を開けている。 傍観に徹していた他の社員達からは感謝感激雨嵐と言わんばかりの盛大な拍手と歓声が沸き上がっていた。 この反応からも、局長達『部屋』班が如何に嫌われていたかがわかるだろう。 「く、くっそぉ…ッ」 社員達に囃し立てられ、得意気に高笑いする専務に局長は悔しそうにギリギリと歯軋りした。 新人は居たたまれなくなり、心を無にし遠い目をしていた。

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