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普段滅多に訪れないだろう人物の姿がオフィスにあり、マミは首を傾げた。 「なんで専務さんがここにいるんですかー?」 今までの緊張感は何処へやら、まるで頭に花が咲いたかのようなマミの間延びた声に思わず新人は脱力した。 いつも空気を読まないマミに振り回されていたが、この時ばかりはその空気の読めなささが有り難く感じた。 「マサミチ君!」 その時、マミの姿を捉えた専務が大きな声を上げた。 マサミチ?え、誰?と新人が不思議がっていると、専務は光の速さでマミに近付いた。 「やあやあやあマサミチ君!!ご機嫌麗しゅう!近頃全然姿を見ないから体調でも崩したのかと心配だったんだよ?!!」 「あは、専務さんうるさーい」 先程までの冷静冷徹な専務は何処へ消え失せたのか。 マミの手を両手でガシッと握り締め大興奮する専務の姿は異常だった。 というか変態にしか見えない。 「あのー手離してくれますー?セクハラで訴えますよ?」 今まで見たことがないようなマミの冷め切った目と声のトーンに新人は驚き、思わず内緒話をするかのように小さな声で局長に尋ねた。 「あの…マサミチって…?」 「え?マミちゃんのことだけど」 あっけらかんと答える局長。 新人は少し考えそれから目を丸くした。 「っっえ?!そうなんですか?な、なんだか男の人みたいな名前ですね…」 「え?マミちゃん男だけど?」 またしてもあっけらかんと爆弾発言する局長。 新人はぎょええ?!!と驚愕した。 「っっっえ?!ええ!!?」 「え、何?女子だと思ってたの?え、なんで?」 「なんでって、いやだって!」 制服が、スカートだから!! 新人は心の中で力強く叫んだ。

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