103 / 110

11

専務が去ったのを確認し、局長はどさりと椅子に腰を落とした。 「はぁ〜あのくそ専務め…」 大きく息を吐き、げんなりとするその表情からは疲れが見える。 そりゃあれだけ叫んだり怒ったりしたのだから体力も消費するはずだ。 「なんだか変わってる人でしたね専務さんって…」 隣のデスクで同じように顔に疲れを滲ませる新人が苦笑いを浮かべた。 まあ変わっているのは局長もなのだが、と心の中で呟く。 「それにしても、どうしていきなり『部屋』の運営を停止するとかって決まったんですかねー?ほんと急過ぎて有り得ないです〜」 頬を膨らませ不満を口にするマミ。 専務と遭遇してから少々不機嫌である。 「専務は数字がどうだこうだ言っていたが、おおよそ今アイツが力を入れているプロジェクト『異世界にようこそ』の方へ経費を回したいのだろう」 「え、なんですかその非常に詳細が気になるプロジェクトは」 「あ、それトイレで経理さんが嘆いてるの聞きましたよー。確か召喚サークルに掛かる経費だけでビルの一つや二つ買える…!って泣いてました〜」 語尾に(笑)が付きそうな感じで話すマミ、一生懸命働いてこんな言われよう、経理の人が不憫でならない。 新人はここの経理課だけには絶対異動したくないと思った。 「ふん、アイツの考えそうなことだ。なんせアイツは私のことを嫌っているからな、私も嫌いだが!私を陥れる為に私が今まで全精力を注ぎ作り上げたこの『部屋』を潰し、自ら手掛けるプロジェクトへの資金を得ようとしているのだろう…だが抗ってみせるさ!この任務を成功させ、アイツの鼻っ柱をへし折ってやる!フハハハハッ!!」 何処ぞの悪役のように声高々と笑い声を上げる局長。 その目には確かに闘志がメラメラと燃えていた。 「頑張りましょうね!えいえいおーっ!」 局長に同調しマミも可愛らしく拳を掲げてみせた。 まるでヒーローショーで司会をするお姉さんのような姿に、本当に男なのかと新人は未だに信じられなかった。 「それでは早速会議を行う!新人君、専務から貰ったファイルを開いてくれ」 「了解しました」 局長の指示で新人は専務から受け取った、『部屋』の命運をかけた任務の詳細が載っているだろうファイルを開いた。 専務直々に任された任務だ、一体どんなものなのだろうか。 三人は一緒にファイルを覗き込んだ。

ともだちにシェアしよう!