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「こ、これは…っ」 ファイルの中身を見て三人は驚愕した。 「……っなんて、普通なんだ!」 皆を代表して局長が叫んだ。 そう、専務から与えられた任務は、なんとも普通の内容のものであった。 その任務の内容は以下になる。 ターゲットはどちらも高校生。 同い年の同級生で、それぞれ違う部活に所属しているが、両片想いの状態であるという。 「いやいや…あの専務がこんな普通の、なんなら楽勝な任務を寄越してくる筈がない…怪しい」 訝しむ局長が隅々までファイリングされた資料を確認するが、確認すれば確認する程、至って普通なティーンエイジャーの淡い恋愛でしかない。 『部屋』の存亡を賭けた任務がこんな簡単な任務でいいのかと局長は拍子抜けした。 「なんだか心配してたよりも簡単そうな任務でよかったですねー。専務さんも本気で『部屋』を無くそうなんて考えてないのかもしれないしぃー」 「…うん、でもなーんか怪しいんだよね」 「もー絶対局長さんの考え過ぎですよぉー。それより見て下さい、新人君なんてターゲットが高校生でそれも両片想いっていう少女漫画的な展開に気合いバリバリなんですけど〜っ」 マミの言葉に局長が視線を向けると、新人が拳を握り、しゃっ!!と喜んでいる姿が見えた。 どうやら今回の任務、新人の得意分野というか好みのカップリングらしい。 「うーんなんか腑に落ちないが…まあ、いいだろう。専務のミスで簡単な任務を寄越したのかもしれないし…うんきっとそうだ、そうに違いない!あの間抜けめ!我々で見事この任務を完遂させ『部屋』を守り抜いてみせようじゃないか!失敗するとせいぜい笑っているがいいさっ!ふはははっ!!」 腰に手を当て高笑いする局長に、マミはきゃー局長さん素敵ーと囃し立てた。 予想外に簡単な任務にやる気満々な三人だったが、この任務が後々大変なことになるだなんて、この時は誰も想像していなかった。

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