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小雀の存在に大鷹は動揺した。 小雀は大鷹のクラスメイトであり友人だった。 小雀とはクラスが一緒になるまで面識がなかったが、同じ運動部に所属するという共通点からよく話すようになりそこから仲良くなった。 今では一緒に昼食を食べたり筋トレしたり、時間が合えば帰り道を共にする仲だ。 それと、小雀は大鷹の片想い中の相手でもある。 「ど、うして小雀君が…?」 眠っている小雀をまじまじと観察する。 小雀の眠っている姿を初めて目にし、大鷹は胸を高鳴らせていた。 名前の通り雀のように濃い茶色の髪は、その一本一本が細く柔らかそうで思わず触れたくなる。 控えめな寝息に、横向きに丸まって眠る姿がなんとも彼らしく、愛らしく思い大鷹はしばらくの間見惚れていた。 「…ん、」 眠っているからと無遠慮にじーっと小雀の姿を見つめていると、気配を感じ取ったのか小雀が少し身動いだ。 大鷹はビクッとして、慌てて目を逸らす。 だが起きる気配はなく、小雀はそのままごろんと寝返りをうつと再び穏やかに寝息を立て始めた。 その際にシーツがめくれ、隠されていた小雀の全身が露わになる。 「……!」 小雀は制服姿だった。 それは大鷹も同じで、唯一違うのは大鷹はきっちり上着まで着用しているが、小雀はもう少しラフな格好だ。 いつもきっちりと閉められているオフホワイトのブラウスは第1ボタンが外され、ちらりと覗く首筋に汗が滲んでいる。 細く柔らかな髪が汗で濡れ喉元に張り付く様を視界に捉えた瞬間、大鷹は全身がカッと熱くなるのを感じた。 見てはいけないものを見ている気がして目線を下げると、今度は黒のスラックスに目がいき、ベルトで締められたウエストの細さにまたもや体温が上がり顔が赤くなる。 目のやり場に困って、慌てて煩悩を消すように頭を振った。 小雀に対し友情以上の感情を抱いている大鷹にとって、今、目の前で無防備な寝姿を晒している小雀の存在はあまりにも刺激が強かった。 大鷹は震える手でシーツをそっと掛け直すと、ベッドの端に腰を下ろし頭を抱えた。 「(…いやいや、なんだこの状況は?なんで小雀君が?というかなんだこの部屋はーーっ!?)」 叫びたいのを我慢し心の中で叫ぶ。 一体ここはどこなのか?どうして小雀と二人っきりなのか。 大鷹は顔を上げると再度部屋を確認した。 全面ピンクな内装、大きなベッド、まるでクラスメイトが話していたラブホテルのようではないか。 「(ーーーッ!いやいやいや、いやいやいやっ!何を考えているんだ俺は!?そもそもラブホテルなんて見たことも中に入ったこともないし、どんな場所かも知らないだろ!!)」 顔を真っ赤にして頭を抱え直す。 部活一本、今まで恋愛のれの字も経験したことのない、ウブで大真面目な大鷹にとって、ラブホテルという場所は想像も出来ない未開の地。 まだ子供の自分には決して足を踏み入れてはいけない大人の世界の話だった、筈なのに。 そんな場所に想い人である小雀と二人っきりでいるかもしれない、そう認知しただけで今すぐどうにかなってしまいそうだった。 「(と、取り敢えず、ここから出て場所の確認をしないと…)」 先程からずっと煩い胸を押さえ、大鷹は出口を探し始めた。 そうして数分後、部屋のどこにも出口がないことを知り再びパニックに陥るのであった。

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