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「ふっふっふ、いい混乱具合だね。その調子で部屋を探索したまえ。小雀君が起きたタイミングでプロジェクターを起動させよう。それを見た君達のリアクションを私は見たい!」 ぬぁっはっはー!!とどこの悪役だと言わんばかりの高笑いを上げる局長に、すっかり慣れている二人はそちらを見るでもなく目の前の仕事に集中している。 「うーーん、なんだか小雀君が中々目を覚まさないですね…大鷹君はすぐに起きたのになんでだろ?」 頬杖をつき不思議そうな表情でモニターを見るマミ。 「ふふ、小雀君は寝坊助さんのようですね。いやいいよ、優しく起こされて、微睡みにとろけそうな目を手で擦り、舌足らずにおはよ…って言って欲しい!そしてそれにぎゅんぎゅんする攻めがみたい!」 「あのー局長さーん、新人君が局長さん化してて気持ち悪いでーす。実に不快でーす」 すぐ近くで口早に理想を語る新人に、マミはうへーと舌を出した。 「んーそれはさりげなく私のこともディスってない?え、私尊敬されてる?」 「やだ違いますよー尊敬してますぅー。ただ、新人君いつもこんな感じじゃないのに今回だけ様子が変だからー調子狂っちゃうんですよねぇ」 「ふむふむ、だそうだよ新人君。あまりマミちゃんを困らせないように」 グーにした両手を顎にあて、マミは上目遣いできゅるんとぶりっこポーズを決めた。 現場の指揮を執るのも部内の人間関係を円滑に築くのもこれ上司の役目、と局長は無駄にキリッとした表情で新人にそう指摘する。 「すいませんマミさん…でも、でも今回のターゲットが自分の好みど真ん中のカプすぎて…っ!もぅ、我慢ならないっていうか、この溢れ出すパッションを止められないというか…っ」 一昔前のポエマーみたいなことを言い出しながら力説する新人。 どんだけティーンの恋愛が好きなのか。 新人の訴えを聞いた局長は先程の凛々しさはどうしたのか、わかるーそれわかるぅー!とめちゃくちゃ頷いている。 「うんうんそうだよね!私も結構そうゆうとこあるからわかるよ!」 「局長さんは基本雑食だからほぼ全てのカプが当てはまりますけどねー」 「まあまあマミちゃん、やる気があるのはいいことじゃないか!新人君!私は君のその情熱、リスペクトするよ!さあ、引き続きガンガン二人をくっつけようじゃないか!」 「はいっ!」 キラキラと瞳を輝かせながらお互いに親指を立て合う局長と新人。 マミはえーなにそれ仲間外れですかーと口を尖らせていた。

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